2003.01/01up
FMブルー湘南
川名 匡の山に遊ぶ
(2002.12/21放送原稿)

ホワイトクリスマス

いよいよ冬シーズン到来。12月もあと残り三分の一となり、今年も秒読み状態です。みなさんはまだやり残した事はありませんか? 
私はというと、毎年毎年やり残したことばかりで、あっという間に正月を迎えてしまうのがほとんどで、今年もおそらくそうなるのでしょう。
さてそんな師走の一大イベントとして、お父さんお母さんの大嫌いなクリスマスがあります。私は下界での"プレゼントほしい攻撃"を避けて、クリスマスの時期はほとんど山に避難しています。今年もその予定で、今回のクリスマスウイークは北アルプスで迎える予定です。山の中でのクリスマスとはいったいどんな風かなというと、まさしくホワイトクリスマス。今日はそんな雪に囲まれたクリスマスのお話をしましょう。

こうして、横須賀の様な暖かい土地に暮らしていると、雪に囲まれたクリスマスは滅多に味わえないモノです。先日はほんの少し雪が舞ったりもしましたが、それでもすぐに溶けてしまいます。しかしちょっと標高の高い山に行けば、今ではもう一面の銀世界です。
針葉樹の森の中にテントを張って深々とふる雪の音を聞きながら傾けるワインの味は格別です。クラッカーの音やジングルベルの音楽も聞こえません。聞こえてくるのは風が木々を揺する音、その風で枝に積もった雪が落ちる音、そして、雪の中をウサギが跳びはねる音も聞こえるかもしれません。私が好きなのは、乾いた雪がテントに積もる音です。サラサラと気持ちがいい音ですが、シーンと静まりかえった風のない夜にしか聞くことができません。雪でギンギンに冷やしたワインを飲みながらの食事は、やはりチーズフォンデューかな。食事が終わったら、暖かいシュラフに入りながら湯気の立つホットウイスキーでも傾けます。大人数ではしゃぐのは似合わなくて、一人っきりか、極々少人数の気のあった仲間とだけ。野暮な会話はいりません。ずっと雪の積もる音をただただ聞きます。こういう静かな森にいると、サンタを乗せたトナカイの鈴の音まで聞こえてくる様な気がしてくるから不思議です。

さて冬に、しかも雪が沢山積もった森の中に入ってくつろぎ、そうして熟睡するには、それなりの文明の利器が必要です。私たちには、熊さんやウサギさんの様な暖かい毛皮はありません。冬用のテントやシュラフのお世話になる訳です。ここで、真冬の寝床についてもちょっとお話しましょう。 冬に、特に沢山の雪の中で張るテントは、夏場のキャンプ場でのテントは全く違う世界です。夏のテントにはフライというモノがあります。フライは雨よけの防水シートで、テント本体の上に覆うように設置します。防水であることから空気しにくく、ベンチレーターという換気口がついています。フライの役目は雨水を直接テント本体につけないように、本体から若干浮いた空間を作る事で最大の効果が得られますので、フライの接地面はできるだけ本体から離した方が高い効果が得られます。また換気の為に、裾も大きく広がっているのが特徴です。それと相反して、冬用のテントには一般に外張という夏のフライに代わる本体のカバーが存在します。外張は暖気をそとに逃がさないという役目もありますが、その最大の役目は防風。つまり冬の強い風からテントを守る役目をします。先ほど話したフライは、換気の役目とフライをテント本体から離す役目で地面に近い接地面は大きく広がっていますが、冬用の外張はテントを完全に覆い包みます。接地面は雪の中に埋めて、風でテントがまくれあがらない様にします。出入口も、夏テンはジッパーで大きく開くタイプがほとんどですが、冬にそれでは、出入りする度にせっかく暖まった中の暖かい空気が外に出てしまうので、冬用テントの場合は、円形の入り口に吹き流しの様な長い筒状の入り口がつきます。

たまに、冬山やヒマラヤ登山などに出てくるテントの入り口は何で丸いの?という質問があったりしますが、これは丸い筒状の出入口に体を沿わせて出入りして、中の暖気を逃がさず、外の換気を入れない為の役目を持っているからです。

次はシュラフのお話。シュラフ。いわゆる寝袋は、夏のキャンプでも使用する寝具です。筒状の綿入りで、体を優しく包んでくれますが、これも冬用となると、中の保温材の量が格段に多くなります。中綿は断然羽毛がよくて、しかも芯のあまり無い良質のフェザーグースが一番です。暖かいシュラフになると、マイナス20度、30度の世界で、裸で入っていても全然寒くありません。夏場も使いますが、その他にシュラフの防水性を高める為のシュラフカバーや、地面からの寒気を遮断するシュラフマットなどが必要装備の中に入ります。

最近は、どこの家にも煙突なんかありません。当然サンタクロースは来られません。また都会の夜は明るすぎてサンタさんもいやがることでしょう。従って、サンタさんに会うには雪が深々と積もっている静かな森の中に入るのが一番です。

プレゼントをあげる年なのにまだ欲しがっている…
雪が大好きな山岳一級遊び人、川名 匡でした。ではまた来週…



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