2002.12/12up
FMブルー湘南
川名 匡の山に遊ぶ
(2002.12/14放送原稿)

冬の食事 
チーズフォンデュー

先週は富士山に登ってきたのですが、天気が悪いだけで雪があまり無く、予定していた雪上訓練もなんとか少しだけ積もっている場所を見つけてやってきました。ところが、山を下りた翌日に、関東にも雪が降って下界は真っ白状態でした。どうやら今年は、特に後半、あまりお天気にはツキがない一年だった様です。
しかし雪の後、下界もずっと寒い日が続いています。私も家ではついつい暖かい格好をしないで油断をしてしまっているので、とってもしばれます。こんな事で、もっともっと寒いであろう冬山に登れるのかなぁと考えてしまいますが、山に入ると、着ている服とか登山装備とか、それ相当の用意をする事と、そして絶えず体を動かしているので、以外と寒さを感じる時が少ないのもまた冬山です。夜はマイナス20度以下も珍しくないのですが、それでも厳冬期用の暖かいシュラフに入れば大丈夫です。但し、テントの中で、早朝起きだして、コンロで朝食用の煮炊きを始めるまではやはり一日で一番寒さを感じる時です。

冬山に登っていて、暖かい食事はなにより楽しいひとときです。冬はテントの中で暖房用にガスコンロを使用しますが、燃料の節約のためあまり長時間は使用できません。しかし食料を調理する為にはほぼ必ず火が必要になります。テントの中での火気の使用は毎回神経を使いますが、それでも火がある内はホッと落ち着くモノです。調理と同時に、行動中雪などで濡れてしまった手袋等を乾かします。暖かい鍋などは最高においしいメニューですが、湯気を沢山出すのは考え物です。と言うのは、沢山出た湯気は着ている服に着き、火の気が無くなると凍り付きます。テントの天井に着いた湯気も夜寝ている間に凍り着き、朝起きてコンロを付けると、溶けだした氷がテントの中に雨を降らせます。ですから調理の湯気は程々に素早く食べるという訳です。

山鍋の定番はキムチ鍋などの辛目で体の芯まで暖めてくれるモノだけでなく、チーズフォンデューなどの洋風も楽しみます。チーズフォンデューは、暖かく溶かしたチーズにフランスパンを浸して食べるスイス料理で、私の大好きなメニューの一つです。昔からの風習で、フォークに刺したフランスパンをもしチーズの中に落としてしまったら、隣の人にキスをしなくてはいけないというきまりがあります。厳格なきまりかどうかは正直言って定かではないですが、少なくとも私は絶対厳格な昔からの風習・おきてと考えて、特に女性陣の多い山では常に、食べ始める前にメンバーに宣言していますが、どうもみんな、あまり実行してはくれません。でも、そんな話があるだけあって、フォークで刺したフランスパンは良く落ちます。

ではここで、チーズフォンデューの作り方をちょっと伝授しましょう。

まずチーズですが、エメンタールチーズとグリュエルチーズを用意します。最近は良くしたモノで、ちょっと大きなデパ地下のチーズコーナーへ行けば直ぐに、色々な産地のチーズが手に入ります。 チーズは溶けやすくする為に、鉛筆の芯を削る様に細かく切り落とします。鍋の内側に臭いづけとして生ニンニクを擦りつけ、刻んだチーズを入れます。この時、コンスターチを少量ふりかけます。さてこのチーズを何で溶かすのかと言うと白ワインです。辛口の白ワインを用意して、ドクドクドクと惜しげもなく鍋に入れ、グツグツと煮え出すと、チーズが程良く溶けるという訳です。ワインだけで溶かすので、お酒に弱い人はちょっと食べられないかもしれません。でもアルコール分は飛んでしまうので、子ども達が食べても大丈夫な(?)はずです。仕上げに隠し味として、キリュッシュワッサーという、サクランボのリキュール酒を少量入れます。キリュッシュワッサーは、良くケーキなどを作る時にも使う、とてもいい香りのお酒です。昔、チーズフォンデューに凝っていた頃は、このキリュッシュワッサーも洋酒の専門店を何軒も探し、スイス製のお酒を使ったモノです。チーズを絡める具ですが、食べやすくサイコロ状に切ったフランスパンだけでなく、ボイルしたカリフラワーやにんじん、ウインナーソーセージ等々も使うとバラエティーに富んで賑やかになります。一緒に飲むお酒は勿論ワインしかありません。普段大好きな日本酒も、チーズフォンデューの時だけはお休みです。注意する点として、残すと堅くこびりつき、鍋を洗うのが大変ですから、暖かい内にパッとワイワイきれいに食べてしまいましょう。

チーズの種類や分量、またワインの種類でも味は全然変わってしまうので、ちょうど日本で言う味噌汁の味の様に、スイスでは家々に違った味の家庭料理、我が家の味となります。是非、色々な材料を少しずつ変えたりして、何度か試してみて、これぞ我が家の味、自分の味というモノを完成させてください。 鍋物は和風だけでなく洋風にしても中華風にしても、そこにいる全員でワイワイと楽しめるので大好きです。

ん…これだけ話すと、チーズフォンデュー食べたくなってきましたね。

実は先日、共稼ぎで忙しい奥様がチーズフォンデューの素なるパック入りの食材を買ってきて作っていて、
「何々〜こんなに便利なモノがあるのかい」と、一口食べてみたらつい、
「こんなの本当のチーズフォンデューじゃ無いよぉ〜!」と思わず口走ってしまって、家族一同にブーイングの嵐に遭ってしまいました。
良く良く考えてみたら、山では作っていても家庭で私が作った覚えは確かにありませんでした。
「じゃ本物食わせろ〜」という子ども達の言い分もそりゃ確かにそうです。

と言う訳で、今日はこれからデパ地下へ行きます。
今夜は我が家で"本物の"チーズフォンデューです。

雪が大好きな山岳一級遊び人、川名 匡でした。ではまた来週…



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