もう11月も終わり。いよいよ今年もあと一ヶ月を残すだけとなりました。
この歳になるとホントに月日の流れは早いモノで、全くまいってしまいます。ついこの間お正月だったはずが、もう師走です。 今年も色々な事がありました。色々な山にも登らせてもらいました。しかし、まだ思い出にふけっている訳にはいかず、あと残り1ヶ月、予定も目白押しです。いよいよですが私の大好きな冬本番になりました。
しかしホントに寒く寒くなりました。日本のこういう四季折々がくっきり別れているところが結構すきです。皆さん風邪などひいていないでしょうか? 私はと言いますと、冬本番ますます快調と言いたいところなのですが、やっぱりちょっと寒いですね。早く冬山へ行って暖かくなりたいです。 と言うのは、皆さんが想像する冬山って、結構寒いだろうなぁと思うのでしょうが、実はそれなりの装備をしてなおかつ身体を動かしていると、結構暑く感じるものです。テントに入っても、暖房をガンガンしますし、練る時はフカフカの羽毛シュラフに入りますので、実はあまり寒さを感じない、というか、寒さを感じる時が少ない訳です。冬山に入っていて、一番寒さを感じるのは、まだ身体が暖まっていない早朝出発の時と、トイレに行く時位です。さすがに、マイナス20度の世界でトイレに行く時は寒さを感じますが、それだけはどうしようも無いので我慢我慢です。逆に、こうして横須賀に居る時は、以外とあまり暖かい格好をしないで、うっかりとパソコンに夢中になっていたりして、気がつくと身体の芯まで寒さがしみこんでいたりします。こんな時は、しばらく布団の中で震えていたりします。
さて冬本番となると、私たち山屋がまず一番に向かう山は富士山です。 この時期の富士山については、もう何度もお話しをしていますが、私たちのように冬山を目指す者にとって、この時期の富士山はとても重要な存在になっています。それは雪上トレーニングとしての富士山です。比較的早い時期に積雪があって、トレーニングに適した広い雪の斜面が有り、交通の便もいい。となるとやはり富士山がグンを抜いて適地となります。今回も、その富士山の大体6合目から7合目付近で、雪上トレーニングを実施します。雪の斜面での基本的な歩き方から、アイゼンと言う、凍り付いた斜面を上り下りする為に登山靴の底に装着して使う道具の使い方などをトレーニングします。また危険な急斜面を登る時に、安全のためにザイルを使う事もあり、このためのザイルワークのトレーニングもします。こうして、主には"滑落"という、雪山に登る登山者にとっては雪崩と並んで事故数の多いアクシデントを未然に防ぐためのトレーニングをやりに行く訳です。今回は、6合目辺りにテントを張りますので、日中の雪斜面でのトレーニングだけでなく、あまり雪山の経験がない人にとっては、雪上での生活と言いますか、テントを張ったり、そのテントの中で食事を作ったり食べたり、そしてタダ寝るだけでも、いい経験とり、トレーニングとなります。
我々が富士山でトレーニングをする時には、吉田口の1合目にあたる、馬返しというところから登ります。吉田口には、五合目まで通年営業の富士スバルラインという立派な道路が有るのになぜかと言うと、下から重い荷物を持って登ることがすでにトレーニングとなるからです。山が嫌いな人から見れば、バカの様な話ですが、 馬返しから五合目までの登りが約3時間。30キロ前後を担いで登るのはちょっときついですが、汗水垂らして山に登る事が、我らにとっては楽しみの一つともなる訳です。
今年は雪が早くから降って、私だけでなく喜んでいる人も多いと思います。しかし、山登りが好きだという方、夏場は高い山に登っている人でも、雪山はちょっと怖いかな、と思っている人は多いと思います。お正月になると、毎年のように遭難のニュースが流れたりしていますから、雪山=危険とか、雪山=怖いと思ってしまうのでしょう。私も実は、雪の山に登りはじめるまでは確かにそう思っていました。なかなか取っつけないのが雪山でしょう。しかし、初めてしまうと、その魅力にとことん取り付かれてしまうのもまた雪山です。それほどに魅力があるのが、雪をかぶった山です。但し、危険な危ない山も確かにあります。その困難さを求めて入山する事もありますし、それが又、雪山の魅力でもあるのですが、その雪山の中でも、比較的安全な山、そしてまったく危険でない山もあるのです。
雪山は怖くて危険。と思っている人が多くいても、子供の頃に雪遊びをしたことがない人はほとんど居ないでしょう。この横須賀だって、極々たまに雪が積もれば、子供達は泥だらけになった汚い雪で遊んでいますし、雪合戦や雪だるま作り、まとまった雪がふる地方では、かまくらを作ったり、雪を素材にしての遊びは本当に面白くて楽しいものです。そして、実は皆さんが怖いと思っている雪山も、その雪遊びの延長線上にあるのです。子供の頃に、日が暮れるのも忘れて遊んだ雪遊びのその感覚とまったく変わらない気分で楽しめる雪山が沢山あります。本格的な雪山に入るとなれば、そこはそれなりに装備も必要ですし経験も必要になってきますが、簡単な雪遊びならば、防水の利いた手袋と長靴と、そして防寒具さえあればいつでも遊べます。 まあ、この横須賀では、雪遊びは滅多に出来ませんが、雪山が怖いと思っている人は、今度どこかのスキー場にでも行った機会に、長靴と手袋をはめて、スキー場から一歩外に出てみましょう。そこが森の中でも、樹林帯を抜けた高い山頂でも、きっとすばらしい世界が待っています。
さて今週末ですが、実は谷川岳の麓、湯桧曽温泉というところで温泉に浸かっているはずです。気のあった仲間達との忘年会ですが、せっかく行くのですから、日帰りで谷川岳にも登る予定です。
また帰りましたらご報告しましょう。
雪が大好きな山岳一級遊び人、川名 匡でした。ではまた来週…
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