2002.10/24up
FMブルー湘南
川名 匡の山に遊ぶ
(2002.11/02放送原稿)

秋から冬へ

だいぶ涼しい季節になってきました。
高い山では、ちらほらと初雪の便りもある時期になりました。
一年は本当に早くて、実は昨年の今頃はヒマラヤでハアハア言ってたのですが、もう一年もたったのかなと、感無量であります。
という訳で、もう11月になってしまいました。

ところで、私もこの時季に、2000メートルにも満たない稜線で大雪に降られた経験があります。その時はテント泊まりで前日まではとっても綺麗な紅葉の秋景色だったのが、夜が明けてみると50センチもの新雪が積もっていてビックリしました。登山道は全て雪の下で、便りになるのは地図だけでしたので、あの時視界が無かったらはたして下れられたかどうか疑問です。その時は場所によっては腰までのラッセルまた別の時、最初はやはり何も積もっていない登山道が、歩いているうちに雪が降り出してドンドン積もり、ほんの2〜3時間で真っ白な雪景色となって、最後はひざまでラッセルとなってしまった事もあります。もっともこの時季のそんな大雪は、滅多にあるものではありませんが、万が一の準備も必要です。たとえばこれからの季節、2000メートル以上のしかも冬は豪雪地帯となる山に登るときは最低限、軽アイゼンとストック位は用意します。ストックは、ハイキングだけを楽しんでいる方達でも持っていることが多いと思いますが、軽アイゼンまでは少ないかと思います。これから秋も終わって冬になっても、低山の比較的暖かい場所にある山でしたら本格的な冬装備がなくても楽しめますが、軽アイゼン程度は必要になるものです。是非この時季に用意されて置くといいでしょう。また、軽アイゼンが一番役に立つのは、雪がバンバン積もっている場所よりも早朝の凍り付いた登山道です。本格的な冬山に登るのでしたら、やはり登山靴のそこの部分全体を覆う本格的なアイゼンが必要になります。

さてそしてこの時季、もし2000メートル以上の山に登るのでしたら、天気が悪くなれば雪が降る可能性が大ですから、やはり本格的なピッケル&アイゼンを持参します。もっとも近年は雪が少ないのですが、私も10月下旬から11月にかけては、目的の山に積雪が無いという情報があっても、一様持参しています。ほとんどの場合、ただのお荷物ですが、それでもいざという時の用意は怠ることが出来ません。それに、ピッケルアイゼンのお手入れをし出したら、そろそろ雪の便りが来て、あっと言う間に私の大好きな、本格的な冬になるなぁとしみじみ思えます。

もう一つ、この時季に必要なのはウエアー類です。夏の登山は汗対策を主にしたウエアー類、つまり速乾性の良いものが支流ですが、これからの季節は保温性を一番に考えなくてはいけません。ただ、登山は冬場でも汗をかく運動ですから、保温性プラス速乾性も兼ね備えたものを着ます。下着や中間着も、夏のものから冬物へ移行します。また登山中は必要でなくても、休憩時間や夜などには寒いので、ちょっとした防寒具も必要になってきます。少し厚めのフリースや薄手の羽毛服などを用意すれば冬場にも使えて便利です。また、雨具の重要性も増します。この時季に雨具無しで、秋の冷たい雨に全身濡れてしまったら、これはもう命取りです。性能のいい雨具を用意しましょう。 これからの時期、冬場豪雪地帯となる山だけでなく、太平洋側のたとえば丹沢辺りでも雪が降る事があります。ただ、太平洋側の山は降ってもまだまだ沢山積もって歩きにくくなるような事はありません。また雪そのものよりも、降雪と同時に気温がグッと下がった時の着るもの、ウエアー類の対策が必要になってきます。また温暖な地域での降雪はべたついた湿気の多い雪がほとんどですので、積もった雪も溶けやすく滑りやすくなっています。ですから、特に下りでは軽アイゼンやストックなどの補助具を使って慎重に降りるようにしましょう。また着るものですが、やはりべたついた溶けやすい雪ですから、防寒対策と共に防水性能のいい上着が必要になってきます。

ところで、この時季の雪で厳しいのが、冬場豪雪地帯となる地域です。雪が沢山積もる地域というのは、晩秋の雪も半端な振り方はしません。先ほどもお話ししたように、一晩に50センチ積もる事もけして珍しくなくて、それほど積もると、登山道は完全に雪の下に隠れてしまいます。ですから、特に11月に入ってからそんな地域の山に出かけるときは、たとえ今、積雪が無いという情報があって、当日も晴れるという天気予報があっても、ピッケル・アイゼン・防寒具等の冬装備を持っていかなくてはいけませんし、登山道が消え失せても、ちゃんとルートを把握して下山出来るだけの技量を身につけているか、又はそんな技量を身につけている人に連れていってもらわなければ、安心して登ることは出来ません。登山コースも初めて行く山あるいは初めての道では無くて、出来れば何度も歩いているような場所を選んだ方が無難です。何事も無ければ夏の山と全く変わりがありませんが、やはり夏山よりもワンランク上の山と考えた方が無難です。

ちょうど今頃は1000メートルクラスの山々の紅葉が真っ盛りだと思いますが、この時期はいつも、長期間続けて色々な山に入っていて、紅葉真っ盛りの秋から落ち葉の季節そしてやがて白い景色となって冬になる。季節の移り変わりを見られるのも楽しみです。しばらくお休みしていたアイゼンやピッケルを手入れしなから、雪山の夢を見るのが楽しみな季節です。

山岳一級遊び人、川名 匡でした。ではまた来週…


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