先日、娘が通学している小学校で山のお話をしてきました。
以前、息子の中学校でもお話をした事があるので、今回で2回目です。
でも今回は、小学校1年生から6年生までの全校生徒だったので、いったいどんなお話をしたら いいのかなと結構悩んだのですが、校長先生から、大体4年生位の子供に話す様に考えてくれれば大丈夫とのアドバイスもいただき、何かしら格好つけたお話ではなくて、今の私が楽しんでいる事、面白かった事、山を通して感じている事をお話しすればいいのかなと思いました。
当日は、海外の山の画像も見せてその説明をメインにお話をしました。予定の時間を少しオーバーしてしまった癖に、結局私の思い の10分の1も話せなかったかな……とちょっと後悔しています。
本当はこの放送で、当日の録音を流してみようかなとも思っていたのですが、よく考えてみれば、お話の半分以上は山の写真の説明であり、その写真を見せながらの思い出やお話でしたので、ラジオではよく分からない物になってしまいます。それ でやめました。お話は、私が山登りをする様になったきっかけから海外の山を目指す様になった話。色々な山の写真の説明。将来の夢。そして海外の山で会った子供達の話などでした。
特に長く話したのは、最初のネパール行きの時に出会った、カトマンズの少年の話です。
彼はたぶん日本で言う小学校の4〜5年生位でした。
日中カトマンズの町をブラブラと歩いていた時、あるヒンズー教のお寺で出会いました。最初は彼の写真を撮った私にお金をくれと言って近づいて来ました。
お金はあげませんでしたが、何となくその後もブラブラと観光をしている私たちの後をついてくる様になり、彼にとって初めてのコーラを飲ませてあげたりして結局仲良くなって別れました。
その日はそれで終わり、彼の事も忘れていましたが、実は翌日バッタリとまた彼に町で会いました。私たちの方が最初に彼に気づき声をかけましたが、フンという感じで全く相手にしてくれません。何故かというと彼は仕事をしていました。自分の体より大きな段ボールの束を担ぎ、せっせと運んでいたのです。ネパールの小学校 は日本と同じで6年生まであり、国が費用を全額みますので、基本的にはどんな子供でも学校に通えます。しかし経済的なゆとりがある家以外の子供達は、ほとんど3年生位で学校に通わなくなります。学校は基本的な読み書きができる程度までと して、小学校高学年になると、家の家計を助けるために働くのです。
彼は、仕事をしながら私たちの方をチラッとみてにっこりほほえんでくれましたが、手は休まず、せっせと仕事をし、何か話したいと思っている私たちの所から、サッ サといなくなってしまいました。
仕事をしている時のあの真剣な目。今でも忘れません。私はその時、何となく感動してしまいました。
と、こんな話も小学校でしました。最後に、みんなそれぞれ夢を持っているのだろうけど、またひょっとしたら大人になっていくまでに色々とその夢が変わる事もあるかもしれないけど、大きくなってもどうか"夢"を持ち続ける大人になって欲しい。そんな話で終わりました。
子供達は、どうやら私の話よりも、日本にない景色の写真の方に興味がいってた様ですが、それでも少しは彼らの頭の中に、私の話がインプットできたかな…何年かして、ちょっとでも思い出してくれる様な事あるといいなぁ…と今では思っています。
今さら言う事でも無いのですが、山登りは大好きです。山頂で眺める雄大な景色、おいしい空気、おいしい水、そして可愛い草花、たまに見かける動物たち、大きくてどっしりとした木々、真っ青な空と真っ白な雪景色。そんな自然の全てが心地よくて山に出かけます。でも山の魅力はそれだけではなくて、知らない土地で出会う人達との交流。一緒に登る仲間達や、仕事として案内するお客さん達との交流。そして彼らが山の魅力に取り付かれて、目をギラギラと輝かせている姿を眺める事。 これも大好きです。私は自然も好きですが、まずなんと言っても"人"が大好きです。私は、遊びも仕事も山にどっぷりと浸かっていますが、考えてみれば、仕事そしてプライベートな山のほとんどの時間を費やしている山岳会での山も含め、人を連れて行く山登りが大半を占めています。だからといって辛いとか不満があるとか言う のではなくて、それが好きだからやっている事なのですが、今年は特にお仕事の山 も多いし、山岳会のみんなも精力的で後から後から予定が目白押しです。しばらくしていない事ですが、たまにはのんびりと自分の山を見つめてみたい。最近はそん な事を考えたりします。でもそんな時でも、気のあった少数の仲間は必要ですし、初めて会う人との出会いも大事にしたいと思っています。
今日はこれから谷川岳です。
山岳一級遊び人、川名 匡でした。ではまた来週…
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