めっきりと涼しくなりました。そろそろ私が望んでいた季節になってきました。
と言っても体は夏の暑い季節になれている為か、寒さがグンと身にしみる季節でもあります。
先日は谷川岳に登って来ました。秋晴れのとってもいいお天気に恵まれて、なかなか充実をした山登りをする事ができました。
さて、先週の谷川岳も少し紅葉が始まっていましたが、標高の高い山々は今が盛りと色づいている事でしょう。
今年の紅葉は少し早めに始まっている様ですので、谷川や日光の山の上辺りは、今週末が見頃かもしれません。
毎年毎年、紅葉は私たちの目を楽しませてくれていますが、皆さんは、秋になると何で葉っぱが色づくのかご存じでしょうか?
それは、アントシアンとカロチノイドという色素が大きく影響しています。
今日はそのお話をしましょう。
紅葉には赤と黄色がありますが、実はそれぞれその仕組みには違いがあります。
秋、朝の冷え込みが気温10度を下回るようになると、植物は葉を落とす準備をはじめます。葉の付け根に離層という薄い膜のようなものが作られ、葉と幹との間で栄養分のやり取りがなくなります。すると、葉には光合成でできた糖分が蓄積されて、この糖分が"アントシアン"という赤い色素に変わっていきます。
葉にもともとあった緑の色素"クロロフィル"は、葉の老化に伴って壊れてしまいます。ですから、紅葉の赤い色は、この二つの色素の微妙なバランスによって、きれいな赤になったり、くすんだ赤になったりする訳です。
次に黄色になるしくみです。
黄色い葉っぱは、"アントシアン"が作られないイチョウなどの葉で起こります。葉っぱには元々、緑の色素である"クロロフィル"のほかに、"カロチノイド"という黄色い色素があって、これは"クロロフィル"で吸収しきれない波長の光を吸収して光合成を行っています。二つの色素とも離層が形成されたあと分解しますが、"クロロフィル"の方が早く分解されるため、残った"カロチノイド"の黄色が目立つというわけです。
つまり黄色くなる葉っぱは、黄色い色素が新しく作られるのではなく、もともと緑色で隠れていたものが、緑が無くなった為に黄色の色素であるカロチノイドが現れた結果であって、赤くなる葉っぱは、赤くなる色素であるアントシアンができあがる赤くなるという訳です。
また、茶色く紅葉するクヌギなどでは、"アントシアン"の代わりに、"フロバフェン"という茶色い色素が合成されます。
ではきれいな紅葉ができあがる条件とは何でしょう。
まず、昼と夜の気温差が大きいと、緑の色素"クロロフィル"の分解が促進されます。
次に、十分な日照時間があれば、たっぷり糖分が蓄積されて、"アントシアン"が増えます。
そして、適度な雨などがあり、ある程度水分が供給されないと葉は紅葉する前に枯れてしまいます。
つまり、昼間はいいお天気が続いてその為夜はグンと冷え込む秋に、適度なお湿りがあれば言う事なしとなります。
また水分補給に関しては、沢筋や渓流の紅葉が一段と鮮やかな事を考えれば頷けるでしょう。
ところで、何故葉っぱは落ちるのだろうって考えた事ありますか?
春夏の最盛期、光合成をする為の主役となった葉っぱ達は、厳しい冬を乗り切るために散っていきます。それは宿主である大木が、また春になってすくすくと育つためのエネルギーを蓄える為です。そしてその落ちた葉っぱ達が、土の中に住む住人達のための大切な掛け布団の役目もします。また落葉時、その木々の老廃物を葉っぱが吸収して落ちるとも言われていて、落葉には、動物の排泄と同じ様な役目もあるそうです。そしてその葉っぱ達は、やがて栄養価豊かな土に変わって、また豊かな実を実らせる為に役立つ訳です。そうやって輪廻転生、この世界は永遠につながって行くのだなと思うと、また紅葉を眺める私たちの目も、違って来るでしょう。
枯れ落ちる前の終焉として鮮やかな色を披露してくれると言うのは、ちょっと寂しさが漂いますが、そんな葉っぱの気持ちが伝わるからこそ、ただただ綺麗と言うだけでなくて、はしゃぎ過ぎずゆっくりと、そしてしみじみと、その最後の宴を見させてもらうという気持ちになるのでしょう。この季節の山登りも、はしゃがずあせらず、のんびりと歩く山が似合います。登山者の多い休日も避けて、コースもちょっとマニアックな、場所を選び、一日歩いても誰にも会わないような山歩き。もっとも最近は、何時どこに行っても登山者がいますので、それも非常に難しいのですが、それでものんびりと歩ける山がいいです。となると、天気もさほど影響が無く、台風などのよっぽど荒れたときでなければ、たとえば雨が降っていても楽しめます。紅葉は、真っ青な青空越しに見てもいいし、濃い霧の中から白いソフトフォーカスで見てもいいし、雨の中、真っ赤なモミジに滴が落ちる姿もまた綺麗です。
今週末は北アルプスの白馬岳に登りに行ってます。
大雪渓を登り、栂池という場所に下山する予定ですが、きっときれいな紅葉に出会えるでしょう。楽しみです。
山岳一級遊び人、川名 匡でした。ではまた来週…
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