先週の週末は完全にお天気に裏切られてしまい、なんと山にいた連休3日間共に雨に降られ、テントもびしょびしょ状態となってしまいました。
殆ど登る事もできずに、いったい何のために行ったのか分からなくなってしまいました。
台風は一段落をしていますが、今年は秋雨前線にだいぶ意地悪されている様です。
さて、 秋になりました。
山は段々と色づいてきて、春とはまた違った華やかさが満ちてきます。
高い山ではもうそろそろ紅葉が始まりつつあります。
日光や奥秩父などの中級山域でも、あと一ヶ月もしない内に全山が色づくでしょう。
先週は、雨の中、南アルプスに登ってきましたが、紅葉はまだちょっと早くて、気の早いナナカマドが色づく程度でしたが、そろそろグッと冷え込んでくれれば鮮やかに染まることでしょう。 秋の山はピークにこだわらず、山麓で、落ち葉を踏みしめながらのんびり散策するのもいいものです。
今回の様なのは駄目ですけど…、そんなときは、ちょっとした雨ならばなかなかおつなもので、心を洗われる様な気がします。
真っ青な青空も、そして雨の風景も、秋の山には似合うのでしょう。
秋と言って私が思い出すのは山登りばかりではなくて、紅葉の撮影旅行があります。
私は山登りを始める前は、写真が好きなカメラ小僧でした。紅葉はカメラ好きに取っては作品作りの宝庫で、それなりの時期にそれなりの場所に行けば、カメラをどちらに向けても、それなりの写真が撮れます。ですから、この時期になると色々な場所に出かけて行きました。
写真を撮るときに、一番重要なものは光です。特に風景写真を撮る場合、日中の頭のてっぺんからの光はどうにも絵にならないので、撮影はもっぱら朝夕となります。特に、朝の光は朝靄がなめるように漂い、草や木やその他見渡す限りの生き物たちが活動し出すざわめきで溢れて、光まで踊り出しているような景色になります。みずみずしい朝露も大事な出演者です。ですから紅葉の写真も、もっぱら朝のほんの一瞬の撮影にかけます。ところが、紅葉が綺麗なある程度標高の高い山の朝はとても寒いのです。その頃の私は、まだ山登りにも染まっていなくて、純粋な都会育ちの若者には辛い経験でした。特にこの時期、暑い暑い夏の陽気に、体の芯までだれきっていて、寒さに慣れていません。手がかじかんでシャッターが押せなかったり、ガタガタと震えてカメラをもてないこともありました。それでも頑張って写真を撮って、やっとからだが慣れてきたのか、それとも日が高くなってきて、一気に気温が上昇しだしたのか、手足がしっかりと動き出した頃、朝の光も落ち着いてきて、写真も撮れなくなります。
最初のうちは、写真を撮りたいために、数ある被写体の一つとして山を選び、秋の山に入っていったのですが、そのうちその山の方に多くの魅力を感じるようになり、また本格的な山に入ると、重たい写真器材をもつ体力もなく、なんと言っても、山のすべてをファインダーの中に閉じこめる程の腕もなく、気が付くとカメラを置いて山登りに出かけるようになっていました。 "秋の山"と言うと紅葉を撮りに行ってたあの時期を思い出し、またその時期に山に目覚めた自分が懐かしく思い出されます。ですから、私の山登りの原点は、初めて登った真夏の埃まみれの富士山ではなく、紅葉に染まる秋の山なのかなと思います。
秋の山は思った以上に気温が下がったり台風が来たり、ちょっと油断をしていると初雪に見舞われたり、夏の山よりも厳しく、技術的にも難しくなりますが、最初にお話ししたように、秋は、何が何でも頂上に登るんだと言うような勢いが似合わない雰囲気に、山全体が包まれています。のんびりと散策をするには最高の時期です。皆さんも、ちょっとその辺の山に出かけて、紅葉を眺めながらブラブラとして見ましょう。きっと、なんで私が山に引きつけられたのか、分かっていただけると思います。
ところで、 今週の私は北アルプスに登っています。北鎌尾根というルートから槍ヶ岳に登ります。北鎌尾根は、一般の登山道があるコースではなく、道無き岩稜帯を登るコースです。ですからザイル等の登擧用具を装備して登ります。ちょっと大変なコースではありますが、その分楽しみでもあります。北アルプスの上部は、そろそろ紅葉も始まりだしている事でしょう。 しっかりと楽しんで来ますので、帰りましたらまたご報告しましょう。
山岳一級遊び人、川名 匡でした。ではまた来週
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