2002.10/10up
FMブルー湘南
川名 匡の山に遊ぶ
(2002.09/14放送)

台風の話


最近、やっと寝ていても寝苦しさが無くなり、虫の音(ね)が聞こえる様になりました。
9月のこの頃は、夏に活発であった小笠原高気圧が後退し、大陸から移動性高気圧が張り出してきて、この2つの高気圧間に秋雨前線が発生し停滞することにより小雨が降り続くことが多くなります。しかしやがて大陸の移動高が強まると、一気に秋らしさが強まるという訳です。やっとやっと、私の嫌いな寝苦しい日本の夏が終わり、涼しい季節となってきました。

ところで、やっと一段落したと思ったら、山登りをするにはちょっと気になる存在が、また秋には現れます。それが、台風です。
8月には山での台風遭遇のお話などもしましたが、今日はその台風のメカニズムのお話をしましょう。 皆さん台風の定義ってご存じでしょうか? 日本付近で台風とは、西太平洋の東経180度…これは日付変更線ですが…これより西側の太平洋で、熱帯低気圧のうち、中心付近の最大風速が秒速17.2メートル以上になったものを、いわゆる"台風"といいます。
気象庁は北西太平洋域の台風については「熱帯低気圧に関する地域特別センターとして、その予報・解析などの国際的な情報の作成・発信を行っています。毎年発生した台風の順番に西暦年号の下2桁を合わせて、台風番号としています。例えば台風0216号は、2002年に発生した16番目の台風のことで、我々が目にするのは下2桁の部分で台風16号と呼んでいます 台風は低気圧の一種ですが、同じ様な温帯低気圧とはその発生機構や構造などが全く違っています。 台風の場合、構造や等圧線は円形で中心ほど混んでいますが、温帯低気圧の場合は歪んでおり、等圧線の間隔はほぼ一定ですし、台風には原則として前線がありませんが、温帯低気圧の場合は前線があります。台風の場合は、中心に行くほど風が強くなり、雨も中心付近ですが、温帯低気圧の場合は暴風の区域は広いですが、最大風速は台風ほどではありません。またその中心に目があるのも台風の特徴でしょう。 熱帯低気圧が発生する地域は熱帯の海上であり、発生数が多い季節は夏から秋にかけてであることはよく知られています。しかし、熱帯の海上ならどこでも発生するわけでは無くて、実は熱帯の海上で限られた地域に発生しています。台風を含む熱帯低気圧が発生するには、26〜27℃以上の海面温度が必要だといわれています。 さてではどうやって生まれるかというと、何かのきっかけにより熱帯の海上にできた弱い低圧部に、次々と積乱雲ができてきます。積乱雲ができるときに発生する熱エネルギー(水蒸気が水滴になるとき、つまり雲粒ができるときには、熱エネルギーを出しますが)その"熱エネルギー"によって上空の温度が上がり、四方八方に空気が流れ出すため強い上昇気流ができます。このため、北半球では反時計回りの低気圧性回転が起こります。下層で気圧がドンドン低くなり、これが台風の誕生です。発達期、低いところでは低気圧性の回転が始まり、周囲からのたくさんの湿った空気が流れ込み、上昇気流も強まってきます。上空での流出する空気の量も増え、上空の中心部では空気が下降を始めます。そして台風の眼の形成が始まります。 雲の中では盛んに雲の粒(つぶ)ができ、そのさい放出される熱エネルギーによって内部の加熱がより増加して、上昇気流の速度もよりいっそう強まります。下層の中心部では、気圧が急激に低下してきます。上層の中心部で始まった下降気流は下層まで達して、台風の眼が完全に形成されます。台風に巻き込む螺旋状の積乱雲ができ、そこでは強い雨が降ります。その頃になると、ひまわりで見ても立派な台風の形となります。 最盛期、中心付近は気圧がとても低くなり、周囲には広い範囲で暴風雨域が形成されています。秋にはこのような状態の台風が日本に来るため、上陸・接近すると各地に大きな被害がでやすくなります。 そんなときに山に登るのは、是非避けたいモノです。 そして衰弱期ですが、台風は上陸すると、陸地により摩擦を受けます。また台風が緯度の高い地域に入ると、海水温が低いため海上からのエネルギーの補給がなくなります。このため、台風の「眼」はなくなり、きれいな螺旋状の雲の形はくずれ、中心付近の風速が弱まり、弱い熱帯低気圧へと変わっていきます。台風が緯度の高い地域に入った場合、周囲の温度が低いため前線ができて、温帯低気圧に変わることもあります。しかし、台風域内は温度が高いため、周囲との温度差が大きいときには、温帯低気圧となってから逆に発達する。つまりまた中心気圧が低くなる場合もあります。

さて、今週末は南アルプスの北岳に登りに行きます。
今のところ台風は来そうにありません。週間予報もバッチリ晴マークです。
期待して行って来ます。秋晴れ万歳。

山岳一級遊び人、川名 匡でした。ではまた来週

 

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