2002.10/10up
FMブルー湘南
川名 匡の山に遊ぶ
(2002.07/27放送)

中国の山の話

ご無沙汰しています。
と言っても、放送は毎週流れていましたが、実は私がこのスタジオにやって着たのは、3週間ぶりです。と言う訳で、ご無沙汰していますです。
中国は新疆ウイグル、及びその後直ぐに北海道の利尻島・礼文島に行って来ました。山岳ガイドとしてのお仕事でです。
今日はそのお話をしましょう。

7月6日から10日間、中国は新疆ウイグル地区にある天山山脈の東の主峰であるボゴダ峰のベースキャンプまでのトレッキングに出かけてきました。私自身、新疆を訪れたのは初めての事です。それでいきなり山岳ガイドを仰せつかったのですが、実は移動に関してや、その他諸々の現地での手配等は、現地の日本語ガイドの方が常時ついて、一切こなしてくれるので、私の仕事はご一緒するお客様のお世話と、トレッキングそのものへの技術的な指導やアドバイスに終始しました。また現地ガイドの方に日本的な登り方、つまりお客様がどうすれば快適か等々を教える役目もあります。

さて新疆です。確かに新疆は異国情緒たっぷりでしたが、それでも一端山に入ってしまえば、どこの国の山もそう変わりはありません。ただ、日本国内の山とはスケールも植生や地形も違っていますが、基本的にはネパールなどに見られる地形とそっくりですし、また初日に訪れた天池という観光地は、まさしくスイスの景色そのものでした。雄大な氷河地形は、ヒマラヤ山脈などに比べればスケールは劣りますが、よりこじんまりとした氷河は、教科書に出てくる氷河のイラストの様にすべてがまとまり、氷河そのものを理解するには最適な大きさでしたし、その氷河の美しさは、スイスなどに比べても見劣りするどころか、よりきれいでした。地元の旅行観光業者の方ともお話をしましたが、スイスなどに比べれば全然近いところに、こんなに素敵な氷河があったなんて私も勉強不足で、この目で見るまで知りませんでした。もっともっと宣伝して、沢山の方達に見てもらいたいなぁと思いました。 ボゴダ峰までの行き方ですが、今回私が行ったコースと時間でお話ししましょう。まず成田から中国は北京に飛びます。北京で一泊し、翌日は新疆ウイグルの区都である烏魯木斎(ウルムチ)へ飛びます。実はここが中国の広さを物語っていますが、成田から北京までは直線で約2000キロ。北京からウルムチまでは約3500キロあります。日本から中国への国際線のフライト時間より、中国国内の国内線のフライト時間の方が長いのです。北京から新疆までのフライトは、濃い茶色に染まった雄大な砂漠の景色がどこまでも広がり、飛行機の窓にずっとおでこをつけて景色を眺めているとあっと言う間に時間が過ぎてしまうくらいに見とれてしまいました。その雄大な砂漠の中を、一本の直線道路が右端の地平線の先の見えないほど遠くから、左の地平線の先のこれまた見えなくなる程先までずっとずっと続いている景色とか、砂漠の真ん中にぽつんと立つ家屋など、本当に飽きない景色でした。飛行ルートは、北京から西安の上を飛び新疆まで続くので、まさしくその昔のシルクロードの上を飛んでいる訳です。そして砂漠のオアシスであるウルムチに到着しました。

ウルムチは想像していたよりも大都会で、高いビルが建ち並び、日本の少し大きめな地方都市と変わらない風景でした。横須賀よりは確実に大きい、横浜よりは規模が小さいという感じです。しかし一歩路地に入れば、地元に住む少数民族たちが開くバザールはまさしく昔昔の私たちが想像しているシルクロードのオアシスの町そのもので、シシカバブという露天で売る羊肉の串焼きや、絨毯な飾り物まで、中国と言うよりは中央アジアの西洋と東洋が混ざり合った、一種独特な雰囲気をかもし出しています。 さて山ですが、そのウルムチから車で数時間の距離にあります。ボゴダ峰を含む天山の峰峰も、ウルムチ市内から展望できる位の近さです。ボゴダ峰から流れ出る水がたまった天池という素晴らしい景色の湖を、地元のポンポン船で渡り、初日はカザフ族の一家が住むパオという住居に泊まりました。パオは大きなテントで、厚手のウールフエルトで覆われています。ちょうど天井の部分を開け閉めでき、開けると非常に明るい、太陽という天然の照明を取り入れる事ができます。緯度の関係ではなく、時差の関係から、夜の10時を過ぎてもまだ明るく、夜なべの酒盛りが盛り上がりました。お酒も沢山飲みました。中国のマオタイ酒は勿論の事、地元の新疆ビールはアメリカのライトビールの様な軽い飲み口で、乾燥した気候にとてもよく合い、グイグイと何倍でも入ります。しかし中でも特に興味をひいたのは、カザフ族が作る自家製の馬乳酒です。馬乳酒とは、馬の乳の酒と書きます。つまり馬のミルクを発効させて作ったお酒でとても強い酒ですが、味はまさしくヨーグルトで甘酸っぱく、日本人などの慣れない者が知らないで飲んだら確実に飲み過ぎてぶっ倒れてしまう飲み物です。とてもおいしかったのですが、私は二口だけ飲んでその後は遠慮しました。山に入ってからの装備運搬など、ネパールなどではシェルパたちが担ぐ人力ですが、この地ではカザフ族の馬たちが運びます。遊牧民族であるカザフ族はとても乗馬が上手で、やっと歩いている様な小さな子供も馬に乗っています。山奥に入るため、渡渉と行って、橋が架かっていない川を何度も渡る時は、私たちも馬に乗りました。とても人になれているおとなしい馬で、私のような不器用な人間でも、一人で手綱を取って川を渡る事ができました。

さて、まだまだ話は続きますが、あっと言う間に時間がきてしまいました。
また来週、続きをお話ししましょう。

山岳一級遊び人:川名 匡でした また来週。

 

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