暑い暑い夏をエンジョイしている今日この頃ですが、皆さんはいかがお過ごしでしょうか?
ところでこの暑い夏も、北アルプスの3000メートルの稜線に行けば夜は10度以下になる事もあります。日中でも20度前後というところでしょうか。私はどうやら北方系民族らしくて、この夏の暑さは耐えられないのですが、早く山の上に逃げたいなと思っています。
先週は中国の山に登ったお話をしましたが、今週も引き続きそのお話をしましょう。
中国はどこへ行ってきたのかというと、中国は新疆ウイグル地区にある天山山脈の東の主峰であるボゴダ峰のベースキャンプまでのトレッキングに出かけてきました。先週はウルムチのお話やトレッキングの開始までをお話ししたので、今日はその続きからです。
この天山でのトレッキングには馬が同行します。通常は我々のテントや食糧など、重い荷物を馬が運んでくれています。そして橋の架かっていない沢を渡る時には、私たちも馬に乗り渡ります。またそれとは別に、もしトレッキングが疲れたら、馬に乗って進む事もできます。私も少し乗りましたが、面白い事に、馬に乗った視線はとても高く、全く違う世界のような気がしました。のんびりと優雅な旅をしている気分にもなれます。
トレッキングの最終目的地は、ボゴダ峰のベースキャンプです。ボゴダ峰自体は、5500メートル程度の山ですが、それなりの登山技術を身につけたメンバーでないと登る事はできません。通常は、1ヶ月程度の期間をかけて頂上を往復します。ベースキャンプは、ボゴダ峰から流れ落ちる二つの氷河が混じり合い、そして流れ着いている氷河湖の上部にあります。キャンプの脇にあるサイドモレーンという、氷河に押し流された石が積み重なった丘に登れば、巨大なボゴダ峰の姿と、そこから流れ落ちる雄大な氷河、そしてその末端にある氷河湖がパノラマの様に眺められます。ヒマラヤの様な規模の大きな氷河ではありませんが、まとまりがあって優雅な姿でした。いつまで見ていても飽きない景色でした。回りには、スイスで有名なエーデルワイスという花にそっくりな花や、名も知らない花々が咲いています。また雪蓮という、キャベツの様な大きさと格好をした植物もあります。この雪連は中国政府から採取を禁止されていますが、漢方薬になるため、今までにかなりの数が取られてしまい、今では探さなければ見つからない様な花になってしまいました。 このベースキャンプから、近くの4000メートル峰への登山も予定していたのですが、残念ながら雨のため登れませんでした。しかし、その日はベースキャンプより標高の高い部分はすべて雪景色となって、前日までとはまた違った、とってもきれいな新雪の景色を見る事が出来ました。
さて、ちょっと話は飛びます。
今回の中国のトレッキングでもそうでしたが、山を歩く時、そのペース配分というのは非常に重要です。方法を誤ると必要以上にばてたり、調子が出なかったりします。通常の山登りでは25分歩いて5分休んだり、50分歩いて10分休んだりと、つまりランダムに休むよりは定期的に等間隔で休憩を取る方が疲れが少なくなります。これは運動のリズムの問題で、登山も歩くとき登るときのリズムが重要です。ただ、これも個人差があって、5分歩いただけでどうしても動けないという人もいるでしょう。この場合、休ませないで歩く訳にもいきませんので、休憩を取る訳ですが、その時重要な事は、必要以上に休まないという事です。自動車などのエンジンと同じで、人間の体も、その運動に必要な回転数と言うものがあります。必要以上に休みすぎると、その体はお休みモードに入ってしまうので、また歩き出すときの負担が増えてしまいます。ですから私が自分よりも体力が弱そうな人と一緒に山登りをするときに心がけていることは、その人が、まずあまり休まないで連続的に一定の運動強度で歩けるスピードを維持してあげると言うことです。兎と亀の競争のように、全力で走ってちょくちょく休むよりも、ゆっくり休まず歩く方が、体の為にもいいのです。ただし、夏の暑い時期での低山ではその限りではありません。人は汗をかいて体温の調整をしている訳ですが、その機能が追いつかないほどの高温多湿の日本の低山では、歩く時間を短くして、こまめに休憩をとり、体温の上昇を抑える努力が必要です。勿論このときは、冷たい水分を補給したりして、体の中から冷やす事も必要です。
さて、快適な山登りをするためにはその人の体力や技術力に合ったコース設定や行動時間が重要です。無理な計画は立てずに、少し控えめに余裕を持った行程を考えましょう。また日頃から規則正しい生活をしましょう。登山の全日に夜更かしなどしたら、寝不足で苦しいだけの山登りになります。私もその昔、まだ若い頃は、夜行列車でほとんど眠らずに朝早くから山登りをしたりしていましたが、今では体がもちません。ですから、私の最近の登山パターンは、朝早くから登り出さないと登り切れないような山に行く時は、前日の夜には麓の街まで行き、駅前のビジネスホテルへチェックイン。ぐっすり寝て、しっかりと睡眠をとってから登っています。 特に日本の山登りの場合は、やはり平日は仕事に忙しく体を動かし、そのまま疲れた体で山に登り、そしてまた過激な運動を繰り返すという様な事がよくあります。せっかくの楽しみで登った山が、苦しいだけでは何の意味もありません。皆さん体には十分に注意をして、余裕を持った山登りをしてください。
皆さんの山に関するご質問や、この番組のご感想をお待ちしています。
宛先は、
〒238−0008 横須賀市大滝町2−20FMブルー湘南
FAXは、0468−21−3511です。
山岳一級遊び人、川名 匡でした。ではまた来週
← 前週の放送 トップページ 次週予告 →
E-Mail : Tadashi Kawana [Copyright(c)1999]
![]()