2002.10/10up
FMブルー湘南
川名 匡の山に遊ぶ
(2002.07/20放送)

夏山の話

そろそろ夏山本番のシーズンとなります。皆さんいかがお過ごしでしょうか?
さて、前回はこの夏に標高の高い山に登るためのお話をしましたが、今日はその続きをしましょう。

今日は、登り方や休み方、つまり登山技術編のお話です。

山登りをしていて、休憩の取り方と言うのは重要で、方法を誤ると必要以上にばてたり、調子が出なかったりします。通常の山登りでは25分歩いて5分休んだり、50分歩いて10分休んだりと、つまりランダムに休むよりは定期的に等間隔で休憩を取る方が疲れが少なくなります。これは運動のリズムの問題で、登山も歩くとき登るときのリズムが重要です。ただ、これも個人差があって、5分歩いただけでどうしても動けないという人もいるでしょう。この場合、休ませないで歩く訳にもいきませんので、休憩を取る訳ですが、その時重要な事は、必要以上に休まないという事です。自動車などのエンジンと同じで、人間の体も、その運動に必要な回転数と言うものがあります。必要以上に休みすぎると、その体はお休みモードに入ってしまうので、また歩き出すときの負担が増えてしまいます。ですから私が自分よりも体力が弱そうな人と一緒に山登りをするときに心がけていることは、その人が、まずあまり休まないで連続的に一定の運動強度で歩けるスピードを維持してあげると言うことです。兎と亀の競争のように、全力で走ってちょくちょく休むよりも、ゆっくり休まず歩く方が、体の為にもいいのです。ただし、夏の暑い時期での低山ではその限りではありません。人は汗をかいて体温の調整をしている訳ですが、その機能が追いつかないほどの高温多湿の日本の低山では、歩く時間を短くして、こまめに休憩をとり、体温の上昇を抑える努力が必要です。勿論このときは、冷たい水分を補給したりして、体の中から冷やす事も必要です。

さて、快適な山登りをするためにはその人の体力や技術力に合ったコース設定や行動時間が重要です。無理な計画は立てずに、少し控えめに余裕を持った行程を考えましょう。また日頃から規則正しい生活をしましょう。登山の全日に夜更かしなどしたら、寝不足で苦しいだけの山登りになります。私もその昔、まだ若い頃は、夜行列車でほとんど眠らずに朝早くから山登りをしたりしていましたが、今では体がもちません。ですから、私の最近の登山パターンは、朝早くから登り出さないと登り切れないような山に行く時は、前日の夜には麓の街まで行き、駅前のビジネスホテルへチェックイン。ぐっすり寝て、しっかりと睡眠をとってから登っています。 もう一つ、登山の行動編として、山道の歩き方のお話しをしましょう。

標高の高い山に登ると言っても、いきなり数千メートルの森林限界から歩き始めるというパターンはあまりありません。まずどんな山でも、登山口は樹林帯で、ほとんどの場合は、樹林の中の登山道を歩き始める事になるでしょう。樹林帯で注意する事は、滑りやすい木の根や、ジメジメした泥道です。どんな登山道でも言えることですが、山で行動する上で重要なことは、注意力を散漫にしないことです。ヌルヌルした木の根やちょっとした岩の段差などにも注意をして、滑って転ばないようにしましょう。泥道を歩く時には、スパッツなどを着けると、靴やズボンの裾が汚れにくくて快適です。また、ちょっと標高が高くなってくると、今度は大小様々な石がゴロゴロしている場所になるはずです。整備されている登山道では滅多に無いですが、浮き石と言って、ちょっとしたきっかけでゴロッと動き出す石もあります。そんな石に乗ってバランスを崩して転んだり、また石を落としてしまい、他の登山者に怪我をさせてしまったりという事もありますので、やはり注意力散漫にならないように、シッカリと一歩一歩確実に足場を見て歩きましょう。さて森林限界という樹林が消えてハイ松や石ころだらけとなると、展望も良くなって気温も涼しく、これぞエンジョイ夏山という感じですが、ここで注意をしなくてはいけないのは、天候の急変です。霧に巻かれて方向を見失ったり、急な夕立でびしょ濡れになったり、また夏山特有の雷などにも遭遇しないように、その場その場での的確な判断が要求されます。霧で遠くが見通せないような時でも、日頃から地図を見慣れていれば安心ですし、いくら午前中がいい天気でも、夕立対策に雨具は絶対に必要です。また夏山での雷は、そのほとんどが午後に発生しますので、毎日の山小屋到着時間はお昼過ぎくらいに設定して、夕方までは明るいから歩けると言うような強行スケジュールも組まないのが、夏山の原則です。
皆さん、けして山を甘く見ないで、シッカリと準備して、登る山の事前調査もして、楽しく山登りをしましょう。

山登りに関するご質問、お待ちしています。
〒238-0008 横須賀市大滝町2−20 FMブルー湘南 
FAXは、0468-21-3511 川名 匡の山に遊ぶの係りまでよろしく。

山岳一級遊び人:川名 匡でした また来週。

 

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