2002.10/10up
FMブルー湘南
川名 匡の山に遊ぶ
(2002.06/29放送)

焼岳の話

何となく梅雨らしい天気が続いています。
私も、もうすでに冬服をしまってしまって何となく寒い日々を送っています。

梅雨時は、雨が降って当たり前ですから、山登りもあまり長期の予定は入れられません。週末に雨が降らなかったら登りに行こうかなと言う様な、登り方になります。なので一年を通して山登りをしている身にとっては、一年中でこの時期が一番、間延びしたと言うか、落ち着いたというか、やはりオフシーズンの様な、つかの間の休暇というか、静かに部屋で雨の音を聞いていると言う様な感じです。

さて、そんな梅雨空に、先日は北アルプスに行って来ました。7月に予定している横須賀市民を対象にした市民登山という公募登山の為の下見です。コースはまず西穂高岳に登り、その後焼岳に登るモノです。先週は西穂方面のお話をしたので、今日は焼岳のお話をしましょう。

焼岳は、北アルプスで唯一の活火山です。今でも山頂付近からモクモクと煙を出しています。標高は2400メートル程度で、北アルプスの山々の中では低いのですが、それでも上高地の南側に殆ど独立峰の様にそびえ立っている姿は印象的で、河童橋などから見ても、主峰奥穂高岳にけして引けを取りません。今回登るコースですが、前日登った西穂高岳、そして西穂山荘に宿泊した後、山小屋からの出発になります。少し長い、行程で3時間ほどの尾根歩きですが、殆どが樹林帯でとても静かな雰囲気があるコースです。北アルプスの登山道は、シーズンの土日ともなるとどこも混雑していて登山者の列という感じなのですが、このコースに限ってはとても静かです。但し、所によって道が細くなっていたり、他の登山道に比べれば、歩きにくい所もありますが、それはこの静けさを求めるためには仕方がないのかもしれません。長い登りや長い下りはなく、殆ど平坦なちょっとした上り下りを繰り返す尾根です。 さてこのちょっと長めのコースを歩き終える頃、樹林をかき分けて目の前に焼岳が見えだします。この辺りから見る焼岳もとても立派です。この尾根コースの終点は焼岳小屋と言う山小屋です。この小屋は、村営のこじんまりとした雰囲気のある小屋で、一度は泊まってみたい小屋です。但し、宿泊できる人数が少ないので、あまり団体では利用できないのが残念です。小屋の主人もとても話し好きで、またお話を聞いていても面白いので、小屋プラスアルファーで魅力的です。

この小屋で一休みした後、いよいよ焼岳の登りが始まります。 小屋から焼岳の山頂まで、約1時間半。標高差で400メートルほどの登りです。途中には展望台もあり、振り返れば西穂から奥穂に続く穂高連峰が見え、自分が歩いてきた道を確認することができます。展望台の先、ここからゴロゴロとした岩の急登が始まります。登りの角度が増してきて、登りながら山頂を眺めるのに、首をかなり曲げなければならなくなります。但し、距離はさほどでないので、今まで歩いてきた道に比べれば短い登りでやがて山頂直下の煙がモクモクと出ている場所に着きます。噴気孔のある岩場を回り込み、登りついたところが、標高2393メートルの焼岳北峰となります。眼下に、上高地の大正池が小さく見え、また目の前に迫力のある穂高連峰が見えます。実は本当の山頂は、この北峰の南側にある南峰で、標高2455メートルの場所ですが、現在は崩落の危険があるので立ち入り禁止となっていて、残念ながら登る事ができません。 直ぐ下には、コバルトブルーに輝いた幻想的な火口湖も見る事ができます。

さて下りですが、南側に1998年に新しく完成した新中ノ湯に下る道を利用します。通常、というか、ちょっと前のガイドブックでは、焼岳に登るコースは、上高地から直接焼岳小屋に登り、山頂に至るコースを往復するものがメインでしたが、新しくできたこの道は、起伏も前者に比べれば緩く、初心者でも楽に上り下りができる道で、最近はこちらのコースを使う登山者が増えています。中ノ湯という温泉は、昔、上高地への入口である釜トンネルの入口に近い国道沿いにありましたが、安房トンネルの工事に伴い移転して、現在は旧中ノ湯よりもだいぶ上の場所、安房峠に向かう旧道上に新たな旅館ができました。 この新中ノ湯に下りる登山道を通って、焼岳山頂から、約3時間ほどで、下り着きます。 市民登山は、ここから貸し切りバスに乗り、この日は新平湯温泉の旅館に一泊。翌日に乗鞍スカイラインを通り、乗鞍岳にも登ってしまおうという欲張りコースです。すでに定員以上の申し込みが来ていますが、締め切りは6月30日となっています。詳しくは、6月発行の広報よこすかをご覧ください。

と言う訳で、二週続けて、横須賀山岳協会主催の市民登山のお話をしました。

さて来週ですが、いよいよ7月に入り、夏山登山の本番間近となります。今年の夏は何処か高い山に登ろうかと考えている方の為に、
夏の標高3000メートル。ちょっと高い山に登るためのアドバイスなどをお話しましょう。
まず手始めに来週は、富士山のお話です。

山岳一級遊び人:川名 匡でした ではまた来週。

 

 ← 前週の放送    トップページ    次週予告 → 


E-Mail : Tadashi Kawana [Copyright(c)1999]
槍ヶ岳