2002.10/10up
FMブルー湘南
川名 匡の山に遊ぶ
(2002.05/11放送)

ヒマラヤ登山

ナマステ! と言うのは、ネパールでのおはよう、こんにちは、こんばんは、そしてさようならを意味する挨拶です。
と言うのは、実はちょっと間違いで、元々はそんな手軽な挨拶言葉ではなく、ナマステのナマは、仏教でいう南無阿弥陀仏や南無妙法蓮華経の南無と同じ語源を持つ"ナマ"であって、ナマステの"テ"はあなたにという意味ですから、"あなたに仏様のご加護がありますように"というような意味合いの言葉です。従って、正式には、しっかりと両手を会わせて、ナマステとまじめにゆっくり節度を持って合掌をしなくてはいけないものなのですが、外国人観光客が多く訪れ、ネパールもどんどんと観光化されてきて、そして段々と手軽にナマステを使われるようになってしまいました。今では、現地のネパール人でも、私たち外国から来た者と挨拶をする時は、気軽にナマステを使っています。きっと古いネパールの大人達は、"最近の若い者達は…"と、渋い顔をしている事でしょう。それでもやっぱりナマステはとてもいい響きで私たちの耳に入ってきます。

さて、ネパール行って来ました。そしてヒマラヤの山も、また登ってきました。今回は2回目でしたので、前回のように、見るモノ聞くモノすべてが新鮮で、真新しい感動と言うことは無かったのですが、今回はどちらかというと懐かしさというか、古い友達やふるさとに久しぶりに会ったり帰ってきたような感覚でいる自分がよく分かりました。

心配していた政府とマオイストとの紛争ですが、カトマンドゥ市内でも、自動小銃を持った兵隊が町の角角に立っていたり、私たちも、空港からホテルまでの間で2度ほど車を停められて検問にあったり、また夜の9時頃になると、賑やかだったタメルの町もいきなりシーンと静かになって、それ以降歩いているのは銃を持った兵隊だけだったり、以前のカトマンドゥとはちょっと違う雰囲気がありましたが、それでも日中はガヤガヤと騒がしいいつものカトマンドゥでしたし、山には入れば全くそんな雰囲気はありませんでした。但し、今回のマオイストとの紛争によって、かなりの数の観光客が減っているそうで、ホテルなどもガラガラなところが多く、歩いている観光客は、そういう政治情勢にうとい日本人ばかりという感じでした。

さて今回は、ゴールデンウィークの期間内でという、とても短い期間でしたので、山に入るにも、そして帰るにもヘリコプターという文明の利器を使いました。ヘリコプターから見たカトマンドゥの町並みやそしてヒマラヤの山々、深く切れ込んだ谷間とそこを流れる川等々、どれもこれもすばらしく、とても心に残りました。 登った山は、ランタンヒマールのヤラピークという山です。標高が5520メートルあります。前回登った山よりも1000メートルほど低い山ですが、今回は山岳会の仲間達を引き連れて、総勢15名という大人数で望んだ為、色々と苦労も多かったですが、その分実りも多く、とってもいい経験ができたと思っています。 標高の高い山に登るため、空気の薄さに体を慣らさせる"高度順応"の期間もあまり取れず、結果として順応に遅れたメンバー5名が高度障害で登ることができませんでしたが、残りの10名は、何とか山頂までたどり着くことができました。私はというと、今回はすこぶる快調で、前回悩まされた下痢にもならず、おかげで体重の減少は無かったのが残念ではありますが、高度順応も順調にできて、殆ど傷害らしい傷害には会わずに、山頂で万歳をする事ができました。 今回登ったヤラピークは、一定の登山経験さえ積んでいれば、日本の旅行会社でのツアーなどでも登れるピークで、今回も2組の旅行会社グループに会いましたが、いずれも2週間から3週間かけて登る行程で、私たちのように1週間で登ってしまうのは非情に珍しい事だった様です。地元のシェルパ達からも、"ストロング"、"ストロング・ジャパニー"と言われてしまいました。 色々と楽しいこと沢山ありましたが、その中でも登山のサポートをしてくれたシェルパ達との交流が一番面白く。特に登頂が成功して下山後、ロッジで催した打ち上げパーティが最高に盛り上がりました。歌好き、踊り好きのシェルパ達が歌や踊りを披露してくれて、私たちにも一緒に踊れと誘われて、恥も外聞もなく踊った事。今でも思い出すとちょつと顔が赤くなります。ネパールの歌、そして日本の歌と、交互にそれぞれ披露する歌合戦は、完全に私たち日本勢の完敗に終わってしまい、自分たちがみんなして歌える歌が少ないことに、今更ながら気がつきました。これからは、国内の山に登っても、歌の特訓です。最後は、ネパールで超メジャーであるレッサンフィリーリーをシェルパ達、そして私たちが一緒に輪になって踊りながら歌いました。

この宴は、夜の11時まで続いて、実はロッジの別の泊まり客(西洋人の観光グループ)から、うるさくて眠れないから止めさせてくれと、ロッジの主人に苦情がありましたが、その主人曰く、「シェルパのやることに私たちは口を出せない」と、止めさせる事を断ったそうです。つまりそれだけ地元ではシェルパ達の権限が大きいという事でしょう。実際の登山も、シェルパがいなければ何もできません。結局私たちも、シェルパ達に登らせてもらっているという感じです。 と言う訳で、今回もしっかりとネパールの山、ヒマラヤの峰峰を楽しんで来ました。
今日は、シェルパ達と盛り上がったレッサンフィリーリーをバックに、お別れしましょう。

山岳一級遊び人:川名 匡でした ではまた来週。

 

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