いよいよゴールデンウイーク突入と言うことになりましたが、皆さんはいかがお過ごしでしょうか?
私はというと、こちらもいよいよネパールに出発します。4月27日、この番組の放送日ですね、10時ジャストにフライトの予定ですから、ちょうど今頃は、成田空港の飛行機の中でちょっとの間お別れとなる日本に手を振っている頃でしょう。翌週、再放送の頃はすでにトレッキング最中です。 と言う訳で、もう今の私の頭の中はネパール一色になっています。
ところで、実は、もともとネパールと言う国は、あまり好きな国ではありませんでした。山を始めた頃から、私のあこがれの山はヨーロッパアルプスでした。派手で華やかなヨーロッパアルプスに比べて、ヒマラヤの山々は私にとって、とても地味な存在でした。また8000メートルの峰々なんて、私の想像の域を遙かに越えていましたし、何となくほこりっぽそうな雰囲気も敬遠していた理由です。ところが、一度出かけてみると、いやがっていたのが大きな間違いだったと言うことが体のそこから分かりました。下痢でお腹をこわしていても、高度障害で頭がガンガンしていても、言葉が全く分からなくても、何となくとても居心地が良くて、流れる時間に、自分を包み込んでいるような暖かさがありました。スイスに行った時は、異国にいるという雰囲気がヒシヒシとありましたが、不思議と、ネパールにいる時はふるさとに帰ったような、自分でも、とても変な気分でした。いざあちらから帰る時、"また絶対に帰って来る"と心に誓いました。ひょっとしたら私の前世はネパール人。又はチベット人だったのかもしれません。カトマンズの町やトレッキングの村々を歩いていると、近所のおじさんや、田舎のばあさん、そして子供の頃の同級生にそっくりな人に良く会いますし、ごく普通に、ネパール語で話しかけられたりもして、「おお久しぶり」なんて思わず日本語で話したりしちゃいます。特にチベット系の人たちとは、誰も初めて会った気がしません。と言うことは、前世はこっちというのもまんざら冗談ではなくて、私のDNAの中には、チベットの血が流れているのだと思います。
ところで、そのネパールですが、実は今現在、とても心配と言うか、悲しい事態が進行中です。
通称マオイストというグループが過激な行動をとり、現在ネパール全土に非常事態宣言が出ています。つい先日、24日には、カトマンズ市内で爆弾を仕掛けようとしたマオイスト4名が自爆したり、治安当局との銃撃戦で負傷者が出たりしています。3月の29日には、通勤通学の人々で混雑するカトマンズ市内の橋の上でマオイストが仕掛けたと見られる爆弾が爆発し、子ども3人を含む27人が負傷しました。マオイストはこれまでも公共の場所に爆弾を仕掛けたことがありましたが、これだけ多数の負傷者が出たのはこれが初めてでした。これだけ物騒な事が起こっているのに、日本に殆どニュースが伝わらないのが不思議なのですが、今のところ、日本人を含む外国人に直接の被害が無いからでしょう。私はネパール在住の日本人の方が発信しているインターネットのホームページから、この情報を得ています。マオイストと言うのは、毛沢東主義を標榜する反政府組織です。元々は普通の政治団体であったようですが、日に日に過激になり、昨年11月23日、ネパール政府による国家非常事態宣言により、マオイストが政府側からテロリストと規定された事をきっかけに、反政府の活動に拍車をかけ、より悪化してしまいました。首都圏のカトマンズ盆地でも、不特定多数の一般市民を標的にした、爆発物による事件などが急増しています。但しカトマンズ周辺ではまだ静かな方で、一番過激なのはネパール中西部方面です。軍とマオイストとの衝突で多数の死傷者が出ています。 日本の外務省による、国別海外安全情報でも、中西部地区には、危険度3から2の渡航延期勧告や観光旅行延期勧告が出ています。私たちが行くカトマンズ市内やランタン谷方面は、危険度1の注意喚起となっています。カトマンズ市内でも、夜10時以降の外出には身分証明書の携帯が義務づけられています。その為、ネパールにある、在ネパール日本国大使館からも、夜遅くは外出しないようにとか、観光ルート以外の場所には立ち寄らないようにとか、狙われそうな政府関係ヶ所には近づくなとか、デモや集会には近づくなとか、色々と注意事項が出ています。この一週間は特にですが、4月23日火曜日から、私たちが行く27日土曜日まで、マオイストによる全国一斉バンダというゼネストが実施されています。バンダの期間中は、バスやタクシーも殆ど動いていなく、商店などもシャッターを下ろしたままだそうです。
さて、物騒なお話を沢山してしまいましたので、皆さんに心配させてしまったかなとちょっと反省ですが、私たちも、安全には十分注意を払って動きますので、あまり心配しないでいてくださいね。27日も、空港からホテルまでは専用の送迎車を予約済ですし、その日はホテルから出ません。翌日も朝早く専用車で空港まで行き、そのままヘリコプターで静かなランタン谷に飛びます。登山が終わってカトマンズに帰る頃には、バンダの影響も薄れている事でしょう。できれば愛するネパールに、これ以上の混乱が起きないように、心から願っています。
それでは出発します。山登り楽しんできます。皆さんもゴールデンウィーク楽しんでください。
帰ったらまた、ご報告しましょう。山岳一級遊び人:川名 匡でした では行って来ます。
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