3月になりました。春です。
私はいつも、雪が好きだと言い続けているので、寒いのが好きなのかな?とか、冬が一番好きなのかなと思われがちです。
実際、震えるような寒さを我慢して登り終えた山の厳しさとか、凍りついた手足を必死に温めたあとのジワジワと皮膚が溶け出す快感とか、かなり変態趣味の所もなきにしもあらずです。また、真冬にしんしんと降る雪をただただ眺めることや、世界中真っ白な、総天然色のカラーでなく、落ち着いた大人の雰囲気の白黒景色にうっとりとしたりして、結局冬もまんざら嫌いでは無い様です。
しかし、真っ青な青空と入道雲の夏も好きですし、落ち着いたセピア色に色づき、夏の暑さでだらけた体をピリッとさせてくれる秋も大好きです。そして、雪が溶けだして、新緑で燃える様な姿を見せてくれる春。沢山の山菜で食いしん坊の私を喜ばせてくれる春。残雪の上にいてもトロンと昼寝をしたくなってしまう程にポカポカと心地よい春が大好きです。要は、自然と接していれば誰でも感じることができる、四季折々の楽しみや喜びや、そして安らぎがある一年間が大好きです。だからこそ、年間を通して私は山に登るのだし、だからこそ、下界に沢山ある誘惑を振り切っても山に行ってしまうのでしょう。もっとも最近は、その誘惑に負ける事も多々ありですが……。
さて、そんな春がやってきました。高い山、そう標高3000メートル前後の山々、そして上越や東北などの雪深い山々は、まだまだ雪が沢山あって、たまにはまだ雪も降ったり、新しい積雪があったりしますが、その雪達も、けして冬の厳しさをつたえるのではなくて、春の優しさを私たちに教えてくれます。雪は段々と堅くしまり、真冬の間は寄せ付けなかった頂まで、あっけなく行ける事もあります。所々で雪崩の音がし出すまでにはまだ少しかかりますが、これからの雪崩は谷筋で起こる全層雪崩か、雪庇が崩壊して起こるブロック雪崩です。気をつけてさえいれば滅多に巻き込まれる事はありません。この3月を境にして、山は本当に穏やかになってきます。いままでガンとして寄せ付けなかった山が手招きすると言う訳です。
そんな春先、今週末は谷川岳という山に行きます。山頂までも登れれば登る予定ですが、それよりも今回は、主に雪崩の、雪上講習会に参加する為に行きます。実際の山に入り、積もった雪を掘ったり踏んだりしてその層によって違う雪質を観察したり、実際に掘った雪の穴に埋め戻してもらい、雪崩の埋没体験をしたりします。雪崩に巻き込まれると人は流れ落ちた雪に埋まってしまいます。雪の力はすごくて、一度埋まってしまうと、その人一人の力では殆ど脱出は不可能になります。実際に埋まってみると、それがよく分かります。そして雪崩に埋まった遭難者を捜し出す訓練もします。これは雪崩ビーコンと言う、いわゆる電波送受信機があって、これを身につけていた遭難者が雪の中から発信する電波をサーチして居場所を探し出すモノです。この雪崩ビーコンは、もうだいぶ前からありましたが、ちょっと高価だった事もあり、つい数年前までは殆どの登山者は持っていませんでしたが、一昨年辺りから所有者が急増し、現在では、雪崩の危険がある様な山に登る登山者での所有率が急速に伸びています。登山者だけでなく、ゲレンデ以外を滑るスキーヤーやボーダーにも普及しています。しかし、モノが機械ですから、ただ持っているだけでいいとうモノではなくて、実際に使用できる様にトレーニングをしなくてはなりません。電波は、通常は発信モードになっていて、仲間が雪崩に埋まった時点で、捜索者は受信モードに切り替えます。デジタル式のビーコンの場合は、発信している電波までの方角と距離がデジタル表示されて使いやすく、通常規模の雪崩でしたら、かなりの効率で素早く埋没者を発見できます。トレーニングは毎回、真剣ではあるけれど遊びも入り、殆ど今風隠れん坊という感じです。 電波の到達範囲は50メートルほどで、殆どの雪崩はこの範囲内で発生しています。 今回は、私がお仕事で使用している、雪の密度を測る道具等も披露して、実際に雪の積雪断面を観測したりもする予定です。夜はテントで寝ますが、雪洞の作り方などの講習会もやる予定なので、上手にできたら雪洞で寝ます。これからの雪は適度に締まっていて、雪は掘りやすく、雪洞も立派なモノができるでしょう。 と言う訳で、今回は隠れん坊や雪かきをして遊んで来ます。
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川名 匡の山に遊ぶの係りまでよろしく。
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雪が大好き。でも春も好きな一級遊び人:川名 匡でした ではまた。
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