そろそろ2月も終わります。これからは下界でもそして山でも、どんどん暖かくなってきて、日に日に春の訪れが感じられるようになるでしょう。山の最低気温や、最大積雪深もピークを過ぎました。雪も降るよりも堅くしまる方が多くなり、カンジキを使わなくても雪の上を歩ける様になるのも間近です。
先日、古い映画ですが、「八甲田山」という山岳映画を久しぶりに見ました。公開されたのは1977年だそうですから、もう25年も前の映画です。明治35年、日本陸軍の青森第五連隊の雪中行軍という冬期訓練で、なんとほぼ全員にあたる200名の兵士が八甲田山で遭難死しました。これは実際にあった遭難で、山岳遭難としても最大のものでしょう。この映画も、昔、映画館で見た記憶がありますが、当時はまだ山を始めたばかりで、私自身冬山経験も無かった頃です。ですから、久しぶりに見た映画は、公開当時とはまた違った印象を持って当たり前ですが、非常に良くできた映画だと思います。久しぶりに感動もしましたし、雪と言う物のなんたるかを知る意味では、その片鱗を知る事ができる映画です。まだ見ていない人は是非見てください。 ちょっと寒がりの人は、しっかりと暖かくして見る方がいいかもしれませんが、高倉健がかっこいいです。 山を舞台とした映画は沢山あります。邦画では、この"八甲田山"以外にも、同じ新田次郎原作の"聖職の碑"とか、"植村直己物語"、ちょっと前の"マークスの山"、最近では"ホワイトアウト"等々。 洋画では、"クリフハンガー"、"バーチカルリミット"、少し前の"K2・愛と友情のザイル"、もっと前で、 "アイガーサンクション"。私的に好きなのは、ション・コネリーが主演だった"氷壁の女"やブラッド・ビットの"セブンイヤーチベット"等々があります。 私も以外と映画好きですので、事"山岳"という文字が出てくる映画は殆ど見ていると思います。実際の山岳での状況にものすごく忠実に作っている映画もあれば、ちょっと首を傾げたくなる場面が度々出てくる映画もありますが、そこは医療関係者が見る病院ドラマや、教師が見る学園モノしかり、その筋の人が見ればおかしくても、話の流れやドラマ性を考えれば、まあ面白ければそれでいいかなという感じです。
さてここで、一般常識と山の常識の違いについて一言。
よく映画や小説の中で、「眠ったら死ぬぞ!」と言うシーンがあります。結論から言うと、寝てしまっても死ぬような事はありません。但し吹雪の中、吹きさらしの場所とか、絶えず雪崩が発生しているような場所ではこの限りではありません。また、怪我などをしたり、極端に体力が落ちている時も死んでしまう事はあります。でもこれは、寝たことによって死ぬのではなくて、あくまで体力が落ちたり、危険な場所に留まっていたりした為のものです。たとえば吹雪で身動きがとれなくなってしまったり、現在地が分からなくなって迷子になってしまったりした時なども、安全な場所に避難して、とにかく食べ物さえ食べていれば、眠ってしまっても死ぬような事は滅多にありません。その為にも、日頃から雪洞を掘る訓練をしたり、非常食やツエルトと言う非常用の簡易テントなどを持参する事は言うまでもありません。私も何度か厳冬期の冬山で、シュラフやテント無しのビバークを訓練では無く、した経験があります。確かに寒くて、ウトウトと眠っても熟睡する事は出来ません。体中がガタガタと震えて、もう絶えられないほどの寒さの中、いつの間にかまたウトウトしては、またハッと目が覚めて、またウトウトしての繰り返しで朝を迎える訳ですけれど、こうして今でも生きています。しっかり食べ物を食べていれば、何とか持ちこたえられるものです。 高所でなにやら得体の知れない注射をバカスカ打ったりはしません。高山病を確実に治す薬はまだありません。あんなのがあったら私も欲しいです。岩場にスーパーマンの様に飛びついたりもしません。そして眠ったら死ぬのではなくて、死ぬ人が眠るのです。
と言うことで、久しぶりにまた、皆さんのご質問コーナーを開こうかなと思っています。
山の道具や技術、その他何でも、山に関係するご質問にお答えします。
またこの放送に関するご意見やご感想もお待ちしています。
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川名 匡の山に遊ぶの係りまでよろしく。
また、インターネットのEメールでのご質問もお受けします。
私の放送用Eメールは、fm@mt-kawana.com です。
今週末は北アルプスの西穂高岳に登りに行きます。あちらは沢山雪が積もっている様で、楽しみです。
また帰りましたらご報告しましょう。
山岳一級遊び人、川名 匡でした。ではまた来週。
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