雪が大好きとか言ってるくせに、先週からなんと2週間も自宅の布団でぬくぬくと過ごしてしまいました。
2週間も山に行かなかったのはホントに久しぶりです。
そろそろウズウズしてきてますので、そろそろ雪の上で寝たいなあと思い出した今日この頃です。
皆さん、雪は暖かいってご存じでしょうか?
そう、雪は暖かいのです。
雪は寒い寒い冬の厳しさから、山の木々や動物や虫たちを守ってくれる暖かな大地の掛け布団です。
今日はその暖かい雪に包まれて眠るお話をしましょう。雪洞のお話です。
雪洞とは積もった雪に掘る穴の事です。 "雪"に洞窟の"洞"と書きます。 特に雪が沢山積もっている時季は、テントよりも雪洞の方が快適です。スコップとスノーソーという雪専用の鋸を使って作ります。なんと言っても、雪さえ沢山あれば、拡張工事しほうだい、好きなように作れるのが楽しいです。 しかも雪は皆さんご存じのようにその温度は0度前後ですから、高い山の中で、たとえばマイナス十何度という寒さの中でも、雪に潜ってしまえば暖かく眠れる訳です。ただ相手は雪ですから、たとえば中を暖めすぎるとポタポタと滴が垂れてきたりと、防水対策はしなくてはいけません。それでも、全く経験が無い人が考えるよりは過ごしやすく快適です。
作り方ですが、まず適当な雪の斜面に横穴を掘ります。入り口は人一人が入れる程度の大きさで、適当な深さまで掘り進んだら、今度は内部を掘り広げます。掘った雪は仲間と手分けして外に出します。普通2〜3人用の雪洞で、内部の広さは一坪程度でしょうか。高さは普通に座って頭が当たらない程度です。掘るのは思ったより簡単で、1〜2時間もあれば立派な雪洞が完成します。冷たい空気は下に溜まりますから、周りに溝を掘り、入り口より若干高くした床(ゆか)を作ればさらに暖かくなります。天井や壁そして床などは、持参した食器や鍋などで平らにします。特に天井部分に凹凸があると、内部が暖かくなってくるととがった部分からポタポタと水が落ちてきて冷たいので、特にきちんと念入りに平らにします。小物を置く棚なども好きなように作れますので、凝り性の人だとちょっと時間がかかるかもしれません。入り口はツエルトなどのシートを使って塞ぎます。 酸欠にならないように天井部分に空気穴も開けます。最後にテントでも使う断熱マットを床にひきます。これが無いとお尻が冷えて眠れません。 ただしマットだけだと雪の上でツルツルと滑る事があるので、マットと雪の間に新聞紙をひくのがみそです。入り口を塞いでしまえば、ローソク一本を立てるだけで暖かくなります。壁が白いのでローソク一本でも明るくなります。また雪は音を遮断する効果があるので、中で騒いでもそとまで響きません。ちょうどこの私が今お話をしている様なスタジオと同じような効果があります。大声で歌を歌ってもへっちゃらです。それと、雪は防音だけでなく、においを吸収する脱臭効果もあるので、ニンニクたっぷりの食材を料理しても、またタバコなどを吸っても、においはすぐに消えてしまいます。
雪洞の欠点としては、まず作るのに時間がかかる事。そして暖かいと言っても0度と言うことです。テントの場合は、外気温がマイナス20度の時はそのままですが、中でコンロに火をつければブラスの20度以上に暖まり、濡れた服なども乾きます。しかし雪洞は、コンロを炊いてもそんなに暖かくはなりません。そして一番の欠点は濡れたモノがなかなか乾かないという事です。ですから雪洞の中ではけしてモノを濡らさないという事が大事です。従って、雪洞を作る時にもあまりがんばって汗だくになったり、服を雪だらけにして凍らせてしまう事の無いように注意をしなくてはいけません。雪に穴を掘ってつぶれない?と良く聞かれますが、ちゃんと作れば大丈夫です。ただ2日も3日も連泊すると、中でコンロを使って煮炊きなどをして暖まるため、天井がだんだんと落ちてきて低くなってきたりしますが、これもその都度修正すれば大丈夫です。さてもしあなたが、自宅で雪洞の雰囲気を味わいたかったら、中身を空っぽにした押入に入りましょう。私も子供の頃よく、押入に入って遊びましたが、ほとんど同じ雰囲気が味わえます。閉所恐怖症の人は駄目かもしれません。(^_^;
ところで雪洞を作るには沢山雪が積もっていなくてはダメですが、雪の少ない場所ではイグールを作ります。イグールは、昔の北米インディアン達の家です。雪をブロック状に切りそろえ、ドーム状に積み上げます。スコップも歯が立たない様な氷に近い雪、たとえば氷河などでは、雪洞よりもこのイグールの方が作りやすいです。日本の雪国に昔からあるかまくらは、雪を積み上げて中を掘り進む形ですので、どちらかと言えば雪洞よりもイグールの仲間でしょう。
今週末は富士山に行きます。 気のあった仲間達と、できれば山頂を目指すつもりですがさてどうなるでしょう。
富士山は雪が少なくて、雪洞どころかイグールも作れない場所ですが、雪か氷か天候しだいでどちらか不明ですが、その上で眠れる事はほぼ確実でしょう。また山から降りましたらお話させて下さい。
雪が大好きな山岳一級遊び人、 川名 匡でした。ではまた。
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