今日は暖かくていいですが、今年の冬はちょっと寒い日が続いています。皆さんいかがお過ごしでしょうか?
今日は生で放送させてもらっています。
今年のお正月も例年通り、私は山に入っていましたが、今年はちょうど運悪く一級の寒気団が南下したり、大きな低気圧がやって来たりして、お正月はあまりいい天気ではありませんでした。私は八ヶ岳に入っていましたが、暮れの29日からお正月の5日まで、晴れたのは元旦の一日だけで、その日も朝夕は小雪が舞っていました。悪天をついて稜線に少し登ってみたりしましたが、猛烈な吹雪と寒さで、ほとんど行動ができない日も多かったです。従って、私たちはテントの中で寝正月だったり、稜線には上がらずに氷瀑という凍った滝を登ったりしていました。今回は大量に登山者が入山する正月に悪天が続いたせいで、また多くの遭難事故もありました。今回もやりきれない気持ちでいっぱいです。特に今回は、北アルプス方面に集中して遭難が相次ぎましたが、昨年こそ厳しい冬もありましたが、ここのところ暖かい冬がずっと何年も続いていて、登山者自身に状況判断の甘さがあった様な気もします。特に北アルプスなどの中部山岳は、冬型の気圧配置となれば、一週間も悪天が続く事もまれではありません。そんな山に登るのですから、一週間身動きができない状態でも生き抜ける様に、十分な食糧と装備、そして経験が必要となります。特に必要な経験ですが、当たり前の事ですが、冬山の経験は冬山に入らなければつかないもので、ここ10年以上も暖かい冬が続いていた為、冬山経験数年程度の若いリーダー達には、本格的な本当の意味での冬山経験は無かった事になります。また、私の昔からのイメージとして、たとえば冬の北アルプスなどは、十分に経験を積んだパーティが十分な準備をして登る山というイメージがありますが、暖かく雪も少なく、登りやすい状況が何年も続いた結果か、最近は北アルプスどころか丹沢辺りの冬山未経験すら少ない初心者が大量に登っている様です。語りつくされた言葉ではありますが、山を甘く見てはいけません。十分に経験を積んだリーダーのもとで、慎重に行動してもらいたいものです。但し、誤解を招くといけないので言いますが、最近の山に登る登山者が全てそうだと言うのではなくて、ちゃんとしたパーティももちろん沢山います。今回も、何日間も耐えて、ちゃんと自力で下山してきたパーティも沢山あります。またちゃんとした行動をしてても、万が一という事となり、遭難し命を落としてしまうのも又山ですが、とかく新聞の三面記事やテレビなどでの報道は、短い時間内に決まり切った内容となってしまうため、それを聞いたり読んだりしている側は、その遭難が本当に仕方なかったのか、それとも未熟な甘い考えで、なるべくして遭難したのかの個々の判断ができなくて、全てが全て"遭難"という二文字でかたづけられてしまうのはとても悲しい事です。
ところで私も、過去に何回か冬山で閉じこめられた経験があります。いずれも大したことは無く、こうして未だに生きていますが、20年近く前の冬山は、やはり最近とは比べものにならないほど雪も多くて寒さも厳しかった記憶があります。ドカ雪で朝夜が明けてから暗くなるまでかけて、たったの2〜300メートルしか進めなかった事もあります。そのときは途中で小規模な雪崩にも流されて、結局山頂に登るどころか、雪に穴を掘った雪洞を一歩も出ずに数日間過ごしました。毎日やることは入り口の雪かきと食糧の残量計算と燃料を節約しながらのコンロで雪を溶かす水作りだけでした。本当に帰れるのかなぁとか、命が危ないとか、そんなことはまったく考えずに、というか頭にも浮かばずに、ただただ雪かきと水作りと食糧計算だけをしていました。やることが無いので、何度も何度も残りの食糧を並べて今日はこれだけ食べてとか、明日はどれを食べようかとか、そんなことばかりでしたが、あとから考えれば、よく耐えられたなと思います。またそのときは冬用のシュラフもありましたが、別の山では、テントからの日帰り予定のルートで、結局ルートが分からずに着の身着のままでビバークとなり、シュラフ無しでマイナス20℃以下の吹雪の夜を耐えたこともあります。そのときは自分の意志に反してガタガタと体中が震えて、その寒さに耐えることだけしか頭の中に無くて、朝の日差しが現れた頃、やっと生きている事を実感しました。その時は朝方になり、吹雪が止んで朝日が差してきた時には助かったぁという気持ちでいっぱいでした。あの時の装備では、もう一日はそのまま耐えていられたか疑問でした。思えばどれもギリギリのところでセーフでしたが、さてこの今の年齢になってそれらが果たして耐えられるかどうか、これもまた疑問ですので、近頃は余り無茶はできないかなと自覚しています。
さて、と言うわけで、雪も沢山降りました。今シーズンの雪は昔のような振り方、つもり方をしていて、登るのは大変ですが、冬山らしい冬山を登ることができてうれしいです。めぐみの雪に感謝しているところです。雪国に米どころが多いのも、山に深く降り積もった雪が、春になって豊富な雪解け水を提供してくれるからって事が実感できます。正月は6日間も山に入っていて、結局毎日毎日降り積もる雪の中でしたが、それでもテントの中で聞くサラサラという雪の降る音はまた格別なものです。困難なルートに挑戦したり、山頂を極めるのもすばらしい事ですが、ただただ山の中に入って、降り積もる雪に覆われて、それでもぬくぬくと暖かくして、好きなお酒などをちびりちびりとやるものまた格別です。一度やったら止められません。この成人の日の三連休は、たまったお仕事をかたづけるために山登りは久しぶりにお休みの週末となりました。ほんと久しぶりの横須賀での週末です。でも、来週はまた山に入るつもりです。今度は富士山を予定しています。この時期の富士山はとても寒くて厳しい山です。条件がよければ山頂から、この三浦半島を眺めてきましょう。
寒い冬に寒いお話を聞きたくない人。そして話を聞いているだけで震えちゃうような寒がりさんには申し訳ないのですが、
また寒〜いお話をします。
雪が大好きな"山岳一級遊び人" 川名 匡でした。ども
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