2002年がやって来ました。皆さん明けましておめでとうございます。
と言っても、そろそろお正月気分が取れ初めてきた今日はもう5日ですが、私は年末からずっと雪山に入っていましたので、山を下ってからやっとお正月を堪能しております。
で、本日は生放送でお喋りさせてもらっています。皆さん本年も、この"山に遊ぶ"をよろしくお願い致します。
横須賀の町は、昨年の大晦日から今年の元旦にかけてはどうだったのでしょうか?
私はですね、ここ何年かは、自宅での年越しをしておりましたが、今回は何年ぶりかで山の中で年越しをさせてもらいました。山、特にテントで寝る時はいつも早寝なのですが、今回の大晦日だけはちょっと贅沢をして、紅白歌合戦をラジオで聞いたりしていました。
登っていた山は長野県と山梨県の県境にある、八ヶ岳という山です。昨年から入山していて、都合6日間ほどを山の中で過ごしました。今年のお正月はあいにく天候があまり良くなくて、連日雪が舞っていました。特に2日の日はかなり沢山の雪が積もりました。その為、予定していたルートは中止した日もありましたが、それでも、全日どこかしらへ行動をして、全くの停滞日はありませんでした。登ってきた山は南八ヶ岳の主峰赤岳や阿弥陀岳、硫黄岳などでした。朝の気温はマイナス10度から15度程度、シュラフから起き出してガスコンロに火を付けるまでは寒いですが、寝ている時は暖かい冬用のシュラフに入っていますし、テントに居る時は暖房用にコンロをほとんどつけっぱなしですからあまり寒さは感じません。但し、寝ている時にシュラフから顔を出していると鼻の頭が寒かったりします。また行動中、つまり山を登っている最中ですが、身体はさほどでもなくても、朝夕は手足が冷たくなります。特に今回は、吹雪の中での行動が多かったので、吹く風が冷たく、良く高い山で木に着く樹氷の様な白い氷が、まつげや帽子にくっついて、雪だるま状態になります。
この樹氷の事、ちょっとお話ししましょう。
正式には着氷。"着く氷"と書きます。ベルグラともいいますし、登山者の間では"エビのしっぽ"とも呼びます。エビのしっぽとは面白いネーミングですが、岩肌や木の枝に着いた着氷は、その発達形態がまさしくエビのしっぽの様な形になるので、この名前、着氷を見ればすぐに納得出来ます。ちょっと見は雪が、木や岩や身体にくっ着いて段々と大きくなっている様に見えますが、これは雪ではなくて氷りです。湿った風が上昇気流に吹き上げられる時、その風の中に"過冷却水滴"という、零度以下なのに氷っていない小さな水滴が混ざっています。冷たい霧粒と言った方が分かりやすいかもしれません。その過冷却水滴は、ほんのちょっとしたきっかけで瞬時に凍り付きます。その霧が山肌や木々や人の身体など、ありとあらゆる物体にぶつかった時、瞬時に凍り付いたモノが着氷です。まず小さな氷が着き、その上にまたぶつかった霧粒がまた凍り付き、ドンドンと発達していき、最終的には大きな"エビのしっぽ"となります。この過冷却水滴は、小さなモノに程良く着きますので、木で言うと細い枝、身体で言うと髪の毛など、細いモノからつき始めます。その為、私の髭などはおじいさんの様に真っ白になります。大きなエビのしっぽだと、八ヶ岳辺りでは50センチほど長く発達したりします。また、どんどとその先っぽにくっ着いて大きく発達する関係で、着氷の先は風上側に伸びます。氷なのに真っ白になるのは、その中に沢山の空気を含んでいるからで、発達した着氷を手に取ってみると、その見た目よりもずっと軽く感じるでしょう。ちなみに蔵王などで有名な樹氷のモンスターは、まずこの着氷が発達して木の枝を氷で包み、その中に雪粒が混じって大きくなります。神奈川でも丹沢などでの着氷が有名ですが、これは相模湾から吹き付ける湿った空気がその原材料となります。
私はお仕事で、実はこの着氷とはすでに15〜6年つき合っています。冬場になると上越方面や信州の山に出かけて、この着氷の観測をしてきました。ですから今ではとても愛着があったりします。 と言うわけで、このお正月も、毎日毎日、まつげや頭や髭にエビのしっぽをくっ着けて、山に登っておりました。皆さんのお正月はいかがでしたか? 山に登った人や山のふもとまで遊びに行った人等々、山遊びしてきた人居ましたらお便りください。 送り先です。
〒238−0008 横須賀市大滝町2−20
FAX 0468−21−3511
FMブルー湘南 川名匡の「山に遊ぶ」まで 皆さんよろしく。
雪の中で寝て寒くないの? とか、吹雪で前が見えない時はどうやって進むの?とか、手軽に登れる雪山は?とか、その他何でも、山に関するご質問やこの番組に関するご意見などもお待ちしています。
さて、 こうしてまた新しい年になって、益々山遊びを続けるつもりです。
本年も"川名匡の山に遊ぶ"どうかよろしくお願い致します。
雪が大好きな"山岳一級遊び人" 川名 匡でした。ども
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