1999.12/15up
FMブルー湘南
川名 匡の山に遊ぶ
(1999.11/27放送)

冬山準備

 こうして私みたいに一年中山登りをしていると四季折々の山の身支度がありますが、なんといっても一番の準備期間が必要なのは冬です。従ってこの時期はこれからの季節、山に登るための色々な準備があります。
  以前お話ししたように登山装備を手入れしたり買い足したりの準備は買い物好き、道具好きの私にとっては楽しい準備となります。また、装備をそろえるだけでなく、体を冬の寒さや雪上での行動に慣らすためのトレーニングもあります。

  まだ今よりも全然若い頃、耐寒訓練と称して、日に日に寒さが厳しくなってくるこの時期にTシャツ一枚で過ごしたこともありました。夜寝るときも薄手の毛布一枚で畳みの上。外出はすべてTシャツです。人間の体というのはすごいもので、はじめはもちろんガタガタ震える毎日でしたが、それでもやせ我慢をしてやっていると、だんだんと体が慣れてきます。なれてきた後は、冬の標高の高い本格的な雪山に登っても、確実に1枚薄着で行動することができました。いい服が買えなかったという金銭的な理由が、そんなことをした理由のほとんどすべてだったのですが、実はそれだけではなくて、一枚薄着をして行動できることによって体の動きが楽になり、非常に快適な動きができたり、いざ耐えられないくらいに寒くなった時には、普段着ていない防寒具を羽織ることによってとても暖かかったりと、効果は大きかったです。もちろん中年おじさんのこの時期になると、効果はあると思っていてもやる気がとんと起きません。
  数年前の話ですが、今お話ししたような事を山登りの新人の若者にちょっと自慢げに話したら、彼はなんと翌日から実行しだして、さらに過激なことに自分の家のベランダで毛布一枚で寝ているのだけど大丈夫でしょうかと、その彼のお母さんから電話がかかってきて、参った事がありました。その話を聞いただけでブルッと寒気が走って、私にはもうまねできないなぁと、しっかりおじさんになっている自分を発見しました。

 ところで、冬山に登るためのトレーニングは耐寒訓練だけではもちろん無くて、雪の上を歩いたり斜面を登ったりの訓練、そして冬専用の特殊な道具を使うための訓練があります。特に雪国育ちでない私のような人間には、雪の上を歩くことだけでも非日常的な特殊な行為ですので、トレーニングが必要です。この時期は毎年毎年、その種のトレーニングをしていますが、凍り付いた斜面を滑らずに下ったりするのはとても難しくて、何年やっても雪国生まれの人にはかないません。やはり物心ついた頃から雪の中で生活している人にはかなわないなぁと、つくづく思ってしまいます。  12月に入ると、まず今冬初めての本格的な雪山の富士山に行きます。富士山はこの時期、毎年登っていますが、目的は雪上トレーニングです。富士山の雪斜面を使って単純な歩き方から始まってアイゼンを使った行動方法やピッケルなどの使い方を反復練習します。ここのところ富士山も暖冬の影響であまり雪が多くないので、初冬のこの時期はトレーニングをする斜面を見つけるのが大変だったりしますが、それでも欠かせない行事のひとつです。
 今日はこれから鷹取山に行って、その富士山に行くための更にトレーニングをします。鷹取山の岩場を使い、アイゼン歩行の訓練です。アイゼンとは、凍り付いた雪の斜面でも滑らないように、靴の裏に付ける金具です。 岩の上をアイゼンを付けて歩きそして登るのはとてもしんどいのですが、こうしてアイゼンを履いて歩くことになれて、足の延長というか、足の一部になるようにする訳です。
 一年中雪山でしたら、私のような鈍感な人間でもだんだんと慣れてくるのでしょうが、毎週のように山に登って、ちょうど足がなれてきた頃、残念かな雪が溶けてしまいますので、結局また暖かい時期に忘れてしまいます。毎年毎年、おいかけっこの様に山に登っています。 鷹取山で私らしい人間を見かけましたら、声をかけてください。髭面のおじさんです。よろしく。

さて、みなさんから、引き続きお便りをお待ちしています。
お便りの宛先です。
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そして、山に遊ぶのホームページは、 http://member.nifty.ne.jp/t_kawana/ です。
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そしてわたしのEメールアドレスは、t_kawana@da2.so-net.ne.jp です。こちらにもご連絡下さい。
皆さんのお便りをお待ちしています。よろしく。


雪山が待ち遠しい 山岳一級遊び人、川名 匡でした。ではまた


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