1999.10/06up
FMブルー湘南
川名 匡の山に遊ぶ
(1999.10/02放送)

秋の山


 秋になりました。山は段々と色づいてきて、春とはまた違った華やかさが満ちてきます。
高い山ではもうそろそろ紅葉真っ盛りですし、日光や奥秩父などの中級山域でも、あと二週間もすれば全山が色づくでしょう。
先週は、台風の後、谷川岳に登ってきましたが、紅葉はまだちょっと早くて、気の早いナナカマドが色づく程度でしたが、この辺りでグッと冷え込んでくれれば鮮やかに染まることでしょう。
そして今週、もう出発は今夜なのですが、新潟は八海山という山に登りに行きます。

  八海山と言えば、お酒の銘柄で一躍有名になりましたが、本物の八海山もとても立派な山です。実は私、今回初めて登るのですが、とても楽しみにしています。ただし、今夜から天気が崩れるとのことなので、ちょっと心配ですが、秋の山はピークにこだわらず、山麓で、落ち葉を踏みしめながらのんびり散策するのもいいものです。そんなときは、ちょっとした雨もなかなかおつなもので、心を洗われる様な気がします。

  さて、秋と言って思い出すのは山登りばかりではなくて、紅葉の撮影旅行があります。私は山登りを始める前は、写真が好きなカメラ小僧でした。紅葉はカメラ好きに取っては作品作りの宝庫で、それなりの時期にそれなりの場所に行けば、カメラをどちらに向けても、それなりの写真が撮れます。ですから、この時期になると色々な場所に出かけて行きました。写真を撮るときに、一番重要なものは光です。特に風景写真を撮る場合、日中の頭のてっぺんからの光はどうにも絵にならないので、撮影はもっぱら朝夕となります。特に、朝の光は朝靄がなめるように漂い、草や木やその他見渡す限りの生き物たちが活動し出すざわめきで溢れて、光まで踊り出しているような景色になります。ですから紅葉の写真も、もっぱら朝のほんの一瞬の撮影にかけます。ところが、紅葉が綺麗なある程度標高の高い山の朝はとても寒いです。その頃の私は、まだ山登りにも染まっていなくて、純粋な都会育ちの若者には辛い経験でした。特にこの時期、暑い暑い夏の陽気に、体の芯までだれきっていて、寒さに慣れていません。手がかじかんでシャッターが押せなかったり、ガタガタと震えてカメラをもてないこともありました。それでも頑張って写真を撮って、やっとからだが慣れてきたのか、それとも日が高くなってきて、一気に気温が上昇しだしたのか、手足がしっかりと動き出した頃、朝の光も落ち着いてきて、写真も撮れなくなります。

  最初のうちは、写真を撮りたいために、数ある被写体の一つとして山を選び、秋の山に入っていったのですが、そのうちその山の方に多くの魅力を感じるようになり、また本格的な山に入ると、重たい写真器材をもつ体力もなく、なんと言っても、山のすべてをファインダーの中に閉じこめる程の腕もなく、気が付くとカメラを置いて山登りに出かけるようになっていました。 "秋の山"と言うと紅葉を撮りに行ってたあの時期を思い出し、またその時期に山に目覚めた自分が懐かしく思い出されます。ですから、私の山登りの原点は、初めて登った真夏の埃まみれの富士山ではなく、紅葉に染まる秋の山なのだと思います。 秋の山は思った以上に気温が下がったり台風が来たり、ちょっと油断をしていると初雪に見舞われたり、夏の山よりも厳しく、技術的にも難しくなりますが、最初にお話ししたように、秋は、何が何でも頂上に登るんだと言うような勢いが似合わない雰囲気に、山全体が包まれています。のんびりと散策をするには最高の時期です。皆さんも、ちょっとその辺の山に出かけて、紅葉を眺めながらブラブラとして見ましょう。きっと、なんで私が山に引きつけられたのか、分かっていただけると思います。

さて引き続き、皆さんの山に関するご質問や、この番組のご感想をお待ちしています。
宛先は、 〒238−0008 横須賀市大滝町2−20 FMブルー湘南
  FAXは、0468−21−3511
  そして、山に遊ぶのホームページは、http://member.nifty.ne.jp/t_kawana/ です。
このホームページは、放送の原稿が過去半年分、約30話ほどを読むことができます。
掲示板など、ホームページ上でご質問にお答えできます。
またホームページにいただいたご質問は、この番組でも放送させていただきますのでよろしく。
そしてわたしのEメールアドレスは、t_kawana@da2.so-net.ne.jp です。こちらもよろしく。
それでは、皆さんのお便りをお待ちしています。  よろしく。

さてこれから、越後の八海山に出かけます。帰ったらまたご報告します。
山岳一級遊び人、川名 匡でした。ではまた。



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