1999.10/06up
FMブルー湘南
川名 匡の山に遊ぶ
(1999.09/25放送)
秋の台風対策
ここに来てやっと朝夕が涼しく、過ごしやすくなってきました。私もやっと寝苦しくない夜を過ごせるようになりました。
さてその9月に入っても、山の予定が目白押しなのですが、今週末は台風の影響で山の予定を縮小せざるをえなくなり、少し寂しい思いをしています。そこで今日は、この秋のシーズンに多い、山での台風遭遇のお話をしましょう。
まず、台風は怖いです。以前、台風観測と称して、わざわざ台風が来ている時に山に登って、強風の有人観測を仕事でした経験がありますが、遊びで山に登るときに、もし台風が近づいてくるような事があったら、私はすたこら山から逃げます。自然のものすごさは人知をはるかに越えています。それは蒙古来襲の時から、数百年たった現代でも、何ら代わりはありません。たとえば、冬の発達した二つ玉低気圧などもスゴイですが、やはり台風は別格です。ただし幾ら逃げ出すと言っても、長期間の予定で山に入っている時は山の中で台風をやり過ごすというか、ジッと通過するのを待つという事があります。以前、何度かこの放送でもお話ししたことがあると思いますが、私も何度か台風につかまってしまった事があります。そんなときのお話をしましょう。
まず、情報の収集が第一です。山に特に数日間をかけて登る山屋にとって、気象情報の収集は絶対に必要です。そこで私達の場合は、携帯のラジオを持参します。時間があればラジオの気象通報を聞いて天気図を書いたりもします。ですから、たとえば2〜3日後には台風が接近しそうだ。程度の情報は容易に得られます。そんなとき、台風が接近してくる時にまだ山に居る様な予定の場合は、できるだけ速やかに下山する訳です。また、台風の発生と接近は早ければ一週間も前から分かりますので、やはりそんな時には山の計画は考え直します。しかし、不幸にして山で遭遇してしまった場合。まず山の稜線は避けます。遮る物のない稜線は、台風の強風をまともに受けますので、地上での強風のさらに数倍強い風にさらされます。私達はほとんどテントで泊まるのですが、台風の風を遮る物のない稜線で耐えられるテントはありません。その場合は山小屋に避難するか、できれば樹林帯まで、できるだけ低い場所まで下ります。しかし低い場所と言っても、崖崩れがおきそうな場所や沢筋もよろしくありません。傾斜の緩い原生林などの自然林がある場所がベストでしょう。どうしても強風の吹きさらしの場所でテントの場合は、テントはポールなどを使って張らずに、そのまま被ってしまうほうが風をやり過ごせます。少しでも風が遮られる岩陰などで、大人数の時はメンバー全員が固まって、テントを被ってやり過ごす。もっともこんな状況は遭難の一歩手前という事ですが、テントを張って、風で飛ばされてしまうよりはいい訳です。また稜線などては無く、樹林帯のたとえば指定されたテント場などでも、悪天時に最悪の場所があります。土地が低く、水が溜まりやすい場所、樹林の境目で、強風にさらされる場所。等々です。またそんな環境を耐えてやり過ごした後、台風一過の青空は素晴らしいものですが、山の場合、台風の通過後、たとえ晴れたとしても安心しては居られません。大量に降った雨で地盤が緩んでいたり、大きな川に面していれば、増水した水も早々引きません。登山道のどこかが崖崩れて通行不能になっているかもしれません。ですから、たとえ通過後も気を抜くことなく、行動しましょう。
さて自然の怖さは、台風などに代表される気象災害も大きいですが、実はそれ以外にも自然の怖さはあります。先日、横浜金沢区のハイキングコースで、蜂に襲われるという事故があったそうです。これも立派なと言っては語弊がありますが、自然の脅威です。よく山に入ると、よりによって登山道の近くに蜂の巣が作られている事もあります。まず一番大事なことは、蜂を刺激しない事です。蜂はなぜ襲って来るのでしょうか?それは自分たちの住みかが犯されるという脅威からです。また蜂は必ず偵察隊をその巣の周辺に飛ばしています。ですから、一匹でも蜂を見つけたら、まず周囲に蜂の巣があるかもしれないという警戒をする事。そしてなるべく速やかに、慌てず騒がず静かにその場所を退散する事です。また蜂は動くものそして黒いものに攻撃する習性があるそうです。これも逃げるときの参考になるかもしれません。
蜂以外にも、たとえば熊さんとか、人間の脅威になる動物たちが山には居ます。そして山はその動物の住みか、つまりなわばりです。その彼らのテリトリーに勝手に踏み込んでいくのが私達人間です。話は戻って気象災害もしかり、私達は自然に対して、もっともっと謙虚で無ければいけないと思います。そして、絶えず危険は存在することをしっかり胸に刻み、自分の身は自分で守る、というとちょっと大げさですが、そんな覚悟も必要でしょう。
さて引き続き、皆さんの山に関するご質問や、この番組のご感想をお待ちしています。
宛先は、 〒238−0008 横須賀市大滝町2−20 FMブルー湘南
FAXは、0468−21−3511 皆さんよろしく。
さてこれから、一日遅れで谷川岳に行きます。秋晴れの青空を期待しています。
山岳一級遊び人、川名 匡でした。ではまた。
E-Mail : Tadashi
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