199910/06up
FMブルー湘南
川名 匡の山に遊ぶ
(1999.09/18放送)
秋の沢と岩登り
先週は奥秩父へ沢登りに行ってきました。
9月と言えどもまだまだ暑くて、水量の多い大きな沢で思いっきり遊んで来ました。さすがにまだ暑いので、紅葉と言うわけにはいきませんでしたが、もう一ヶ月もすれば見頃となる事でしょう。その頃にはまた行ってみたいなと思っています。
秋の沢登りは、夏とまたチョット違った味わいを楽しめます。夏の沢登りはというと滝登りです。ギラギラとした太陽の下で、全身びっしょりになりながら滝を登ったり、釜と言う大きな滝壺で泳いだり、つまり清流と全身で遊ぶのが夏の沢登りですが、夏から秋に季節も落ち着いてきて、山が原色からセピア色に染まる頃には、沢登りも少し落ち着いて、若者が大人になっていくような落ち着きを味わいます。紅葉した葉っぱだけでなく、沢の水量も少なくなって沢自体も落ち着いた雰囲気になります。水に濡れた岩や、みずみずしく苔むした岩に、真っ赤なモミジの葉がペタリと張りついていたり、流れ落ちる滝の音も少し静かになっていたり、どちらかというと静けさを味わえる訳です。そんな秋は丹沢のような滝登りを目的とした沢ではなくて、沢をゆっくりと登る事を目的とした、ちょっと大きな長いルートの沢に入って、一日では抜けずに沢の中で一泊するのが楽しくなります。またそんなときは、夏のようにびっしょりには濡れないとしても、やはり沢を登るので足が濡れていたりして寒いので、小さな焚き火をします。焚き火の火は暖かくて、濡れたものを乾かしてくれます。また焚き火の煙は、沢でキャンプをするときに、山にいるブヨなどのいやな虫を近寄らせない効果もあり、寝るまで火は絶やしません。こういうときのお酒は真夏に美味しいビールではなくて、日本酒やウイスキーがあいます。これが秋の山の密かな楽しみでもあるわけです。
さて、先週末の沢登りの後、山は少しお休みで、久しぶりに自宅療養しています。先週もお話しましたが、ここ二ヶ月ほどはほとんど休みなく山に登っていたので、なかなか疲れがとれなかったのですが、やっと自宅でのんびりしています。久しぶりに思いっきりパソコンにさわったり、寝だめをしたり、飲み会のはしごをしたりで、都会のに文明生活を楽しんでいますが、結局このお休みも2週間で終わって、また来週には登りに行きます。 今度行く山は、群馬県と新潟県の県境にまたがる上越国境稜線の山、谷川岳です。谷川岳の一ノ倉沢というところに、岩登りで入ります。
谷川岳の東面の山肌は鋭く切れ落ちた沢が幾つもあります。マチガ沢、幽ノ沢、そして一ノ倉沢と見栄えのする岩場がある沢が並んでいます。特に一ノ倉沢はスケールが大きくて、舗装道路があり、普通に観光で入れる一ノ倉沢の出合から谷川岳の稜線までの高度差が1200メートル。その落差を岩が突き上げているので、その出合で黙って見上げていると、ずっと見上げている状態になって、首筋が痛くなったり、知らぬ間に口をポカンと開けていて間抜けずらになる危険性があります。
谷川岳の標高は2000メートル弱なので、9月下旬だとまだ紅葉には早いですが、そろそろ気の早いモミジが、黒光りする岩肌にちょこんと赤く張りついた景色もみられる事と思います。ちなみに谷川岳の紅葉の見頃は10月中旬位でしょうか。その頃には全山紅葉の景色が見られるでしょう。
私が一ノ倉沢デビューをしたのは、もうすでに20年近く前の事ですが、その時も秋でした。10月の秋真っ盛りの中でした。全日はあいにくの雨で、本当に登れるのか分からないまま出合に到着して、夜が明けてきたら思った通り谷は霧の中でしたが、しばらく待機していると、徐々に霧が上がりだして段々と岩場が見えてきて、その見え方が、まるで大舞台の緞帳が上がるようにゆっくりと重々しくて、その初対面は劇的でした。
頭の中を不安と怖さに占領されていて、岩登り自体どんなふうに登ったのか、今ではほとんど覚えていませんが、その時の一ノ倉沢の岩場の姿はしっかりと覚えています。谷川岳、特に一ノ倉沢の岩場は、スカッと晴れた真夏に対面するよりは、深い霧に包まれて徐々に現れる方が似合っています。
ただし、登るにはスカッと晴れた方がもちろんいいです。だから来週、私が行くときにはいい天気を期待しています。
引き続き皆さんからのご意見やご質問を待ってます。
宛先は、〒238−0008 横須賀市大滝町2−20 FMブルー湘南
FAX は、0468−21−3511 川名 匡の山に遊ぶの係りまでよろしく。
そして、山に遊ぶのホームページは、http://member.nifty.ne.jp/t_kawana/
です。
このホームページは、放送の原稿が過去半年分、約30話ほどを読むことができます。
掲示板など、ホームページ上でご質問にお答えできます。
またホームページにいただいたご質問は、この番組でも放送させていただきますのでよろしく。
そしてわたしのEメールアドレスは、t_kawana@da2.so-net.ne.jp
です。こちらもよろしく。
それでは、皆さんのお便りをお待ちしています。
さて私を迎えてくれるのは、スカッとした青空でしょうか、深く思い緞帳のような霧でしょうか?
山岳一級遊び人、川名 匡でした。ではまた。
E-Mail : Tadashi
Kawana [Copyright(c)1999]