1999.10/06up
FMブルー湘南
川名 匡の山に遊ぶ
(1999.07/31放送)

越後湯沢通信(4) 〜上越国境稜線の山々〜

 越後湯沢も暑いです。連日30度以上の暑さが続いていますが、皆さんの横須賀はいかがでしょうか?
さてそれでは、山の上も暑いかというと実はそうでもなくて、越後湯沢から標高差で1000メートル以上ある私の仕事場は、ちなみに今日の正午で20.3度でした。夕方下界に下り着くとムッとした暖気に包まれてびっくりします。山に上がると乾いた風が心地よくて、ちょっと日陰に入ると涼しさと心地よさが味わえます。仕事を忘れて思わず昼寝でもしたくなる位です。

 仕事場は山の中にある観測小屋ですが、いつも座っている机の前の窓を開けると上越国境の山々のパノラマが広がります。私はこの上越国境という言葉の響きがすきですが、群馬県北部の上州と新潟県の越後の県境に延々とのびる稜線を上越国境といいます。新潟に上越市というのがありますが、それは新潟を三つの地域に分けた上越・中越・下越という呼び名の上越です。ここで私が言う上越国境の上越は、先にお話しした上州と越後の国境という意味で、上越市の上越とはまた違う言葉です。昔の国境(くにざかい)いわゆる国境が山の名前になったものは色々な地方にありますが、たとえば三つの国境(くらざかい)にあるやまを三国山なんていう呼び名は色々なところにあります。有名なところでは、今で言う山梨・関東・長野、昔で言う甲州・武蔵・信州の三つの国の境にそびえる山があって、その名前はその三つの名の頭を取って甲武信岳といいます。甲武信岳も好きな山の一つですが、その話はまた後日として、窓から見える上越国境の山々に戻りましょう。

 私の仕事場はとても見晴がいい場所で、西側のほとんどの山が見渡せます。その見える山のほとんどが、長い長い上越国境の山々です。ここからは皆さん目をつぶって、頭の中に山を描いて想像しながら聞いて下さい。
 まず一番右側、私の位置から言うと真南に見えるのが平標山です。なだらかですがなかなか存在感のある山で、以前真冬に登ったときは、日本海から吹く季節風にあおられて、立っているのがやっとだったことを思い出します。その平標山のすぐ左に、より高くそびえるのが仙ノ倉山です。仙ノ倉は標高2000メートル以上の山です。その横にあるのが万太郎山、そしてさらにその左、なだらかなで小さな、よく見ないと見落としてしまうピークが谷川岳本邦です。谷川岳の山頂は双耳峰と言って、よく見ると山頂部分に二つのピークがあります。新潟側から見て右側、群馬側から見て手前にあるのがトマの耳、群馬側から見て奥、新潟側からみて左側にあるのがオキの耳です。谷川岳の後ろには上州の名峰・武尊山が見えます。信州の穂高は稲穂の穂に高いと書きますが、上州武尊はぶしの武に尊敬の尊の武尊と書いてほだかと呼びます。さて元に戻って、谷川岳のすぐ左にあるのが芝倉岳です。この谷川岳と芝倉岳の間、新潟側はとてもなだらかですが、反対側の群馬側は、マチガ沢、一ノ倉沢、幽ノ沢という谷川岳の大岸壁があります。そんな大きな岩場があるなんて、こちら側からは想像もできません。ちなみに、その芝倉岳の真下には、JR在来線の上越線が走る清水トンネルが通っています。雪国の主人公が駒子にあったのはあの山の真下という訳です。さてその芝倉岳の左は、ちょっと低くなって蓬峠があり、そのさらに左に、ちょっととんがった山があります。名前は大源太山と言います。上越のマッターホルンと言われている山で、スケールは本家スイスのマッターホルンに遠く及ばないですが、形はホントにそっくりです。この山はまだ登った事が無いので、一度は登ってみたいと思っています。大源太からさらに左に尾根を進むと、とてもなだらかな山容をした巻機山があります。この山はいつも秋に登っていますが、紅葉は最高に綺麗な山です。この巻機山の後ろの方にはちょこんとですが尾瀬の山、至仏山と燧ヶ岳が見えます。さて上越国境はこの巻機山辺りで終わりですが、稜線はまだ続きます。巻機山の左に見えるのは、中岳・越後駒ヶ岳・八海山という三つの山が重なり合って見えますが、この三つの山をひとつにして越後三山と言います。さて尾根の連なりはここまでですが、これだけの山をボーっと眺めていると一日が終わります。 どうですか、皆さん想像できましたか? ちゃんと、上手に想像すると、景色が見えてくるはずです。皆さんがんばって下さい。

 さて、山の近況報告をします。空は真っ青、緑はキラキラ輝いて、遠くの山々はあくまで蒼く、モクモクとわき上がる雲までが夏真っ盛りと言う感じですが、たまに吹く風はあくまでさわやかで、心地よいです。 今この山はアカネトンボの大宴会で、山を歩いているとトンボ達にすぐ囲まれます。なにを勘違いしたか、もう赤くなっているナナカマドもあって、何となく秋もそんなに遠くないという感じがします。そう、久しぶりに、新しいブナの実が落ちていました。結構沢山落ちていて、それからブナの木を見上げてよく見ると、結構沢山のまだ蒼い実がついていました。今年の秋は何年かぶりにブナの実拾いができそうです。ブナの実は、生で食べても香ばしくておいしくて、お酒のつまみに最高です。今年の秋は楽しみです。

  さて、そろそろお仕事の時間です。
私の言う遊び人は、小原庄助さんのように年中遊んで暮らすの遊び人ではなて、 仕事も昼寝も山登りもみんな楽しくやりましょうの遊び人です。
今日は最後に言い訳でした。m(_ _)m 一級遊び人 川名 匡。では今日のお仕事してきま〜す。




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