1999.5/18up
FMブルー湘南
川名 匡の山に遊ぶ
(1999.03/20放送分)
雪があるから行ける山
最近は新潟にいても雪ではなく、めっきり雨が多くなってきました。平地の雪はどんどん溶けていますし、すっかり春の気分です。山もそろそろ、所々でパクッと口を開けだしました。雪の斜面に亀裂が走り、もうそろそろ、そこらじゅうの谷で雪崩が起き出します。春先に起こる底雪崩れの音は迫力があります。狭い谷間にこだまするはらわたに染み渡るような音は、なんど聞いてもあまり気持ちのいいものではありませんが、その音は春の訪れの音です。沢筋にふきのとうがあらわれ出したり、残雪を勢い良く跳ね上げて起きあがった木の枝がザワザワとうるさくなったりするのと同じ春の音です。これだけポカポカと気持ちいい陽気になると、雪山を歩いているとそよ風が気持ちよかったりします。
さて、また一つご質問が来ています。匿名希望のYさんからのご質問です。
*************************************
毎回、放送聞かせてもらっています。良く雪山で遭難したときには眠ったら死ぬと言いますが、本当ですか?
眠らないで起きているのって大変だと思うのですが?
*************************************
とこれだけなんですが……、
確かに、よく映画や小説の中で、「眠ったら死ぬぞ!」と言うシーンはありますね。 結論から言うと、寝てしまっても死ぬような事はありません。ただし、吹雪の中、吹きさらしの場所とか、絶えず雪崩が発生しているような場所ではこの限りではありません。また、怪我などをしたり、極端に体力が落ちている時も死んでしまう事はあります。でもこれは、寝たことによって死ぬのではなくて、あくまで体力が落ちたり、危険な場所に留まっていたりした為のものです。たとえば吹雪で身動きがとれなくなってしまったり、現在地が分からなくなって迷子になってしまったりした時なども、安全な場所に避難して、とにかく食べ物さえ食べていれば、眠ってしまっても死ぬような事は滅多にありません。その為にも、日頃から雪洞を掘る訓練をしたり、非常食やツエルトと言う非常用の簡易テントなどを持参する事は言うまでもありません。私も何度か厳冬期の冬山で、シュラフやテント無しのビバークを訓練で無く、した経験があります。確かに寒くて、ウトウトと眠っても熟睡する事は出来ません。体中がガタガタと震えて、もう絶えられないほどの寒さの中、いつの間にかまたウトウトしては、またハッと目が覚めて、またウトウトしての繰り返しで朝を迎える訳ですけれど、こうして今でも生きています。しっかり食べ物を食べていれば、何とか持ちこたえられるものです。
ところで、先週の週末は谷川岳に行って来ました。沢山の残雪の中を春の陽気に誘われたのか、私たち以外にも沢山の登山者がいて、大入り満員の山でした。
実は今回の山は登りに言ったのではなくて、雪上技術の講習会に行って来ました。雪崩れに遭遇した時のトレーニングや、けが人を搬出運搬するトレーニングです。雪崩れトレーニングと言うのは、雪崩を予知するための観測方法や、待避方法。そしてもし遭遇してしまった時の脱出方法や、埋まってしまった人を捜して助け出すトレーニングです。搬出運搬トレーニングは、怪我をしたりして動けなくなってしまった人を、ツエルトなどのシートを使って簡易タンカーを作り、山の下まで運搬するトレーニングです。すべて重要で、万が一の時の為に必要な技術を習得する為のトレーニングでしたが、毎回毎回山に登るだけではなくて、こうした技術を習得する為の機会もまた必要です。中でも、特に搬出トレーニングは面白かったです。ホンの短い距離だったのですが、簡単に作ったそりにけが人役の人を乗せて、10名ほどで周りを囲み登山口まで運ぶトレーニングでした。全員がロープを持って、全員の息を合わせて、登りや下りの雪の斜面を移動します。登りを引き上げるのも大変ですが、急斜面を下る方がやはり緊張します。普通に下れば30分ほどの距離を、汗だくになって2時間近くもかかって下り着きました。なかなか有意義なトレーニングでした。とってもいい天気で、またまた日焼けで真っ黒になってしまいましたが、帰りに入った湯桧曽温泉で気持ちよく汗を流せました。
そして今週末というか、来週の明後日は、武山にお花見に行って来ます。ちょっと早いお花見ですが、三浦半島は暖かいので、そろそろお花も咲き出している事でしょう。あの辺の山でちょっとにぎやかに宴会をしている計13名のグループがいましたら、それは私たちです。気軽に声をかけてみて下さい。
さて引き続き山のご質問をお待ちしています。ご住所を教えていただいた方には、私自家製の山の絵はがきを送りますのでよろしく。
〒238−0008 横須賀市大滝町2−20 FMブルー湘南
FAX は、0468−21−3511 川名 匡の山に遊ぶの係りまでよろしく。
また、インターネットのEメールでのご質問もお受けします。
私のEメールは、 t_kawana@da2.so-net.ne.jp です。
それでは、皆さんのお便りをお待ちしています。
春の桜と残雪が大好きな一級遊び人、川名 匡でした。ではまた。
○今回の話に関連したリンク→SINRA-HP:谷川雪上トレーニングrep
E-Mail : Tadashi Kawana [Copyright(c)1999]