1999.5/18up
FMブルー湘南
川名 匡の山に遊ぶ
(1999.01/16放送分)

鯉も凍る滝登り

 寒い毎日が続いておりますが、皆さんはいかがお過ごしでしょうか。私は、まだ風邪が治っていません。鼻風邪と咳ですが、早く治したいものです。と言いながらも、横須賀よりも格段に寒い山に今日もこれから登りに行きます。

 さて、今日はアイスクライミングのお話です。皆さんアイスクライミングと聞いていったいどんなイメージが沸くでしょうか? 言葉の通り、氷を登る訳ですが、元々発祥地のヨーロッパでは氷河を登る技術でした。ご存じのように日本には、現在氷河はありませんので、日本でアイスクライミングと言うと、凍り着いた滝を登ることを言います。凍り付いた滝と言うと、皆さん北関東にある袋田の滝を思い出すと思いますが、あの袋田の滝でもアイスクライミングに興じるクライマー達がこの時期訪れます。滝はあまり流れが強すぎると寒くても凍り付きません。やはり常時少ない水がチョロチョロと流れているような滝ほど綺麗に凍りつくものです。まるで写真か何かでパチリと時間を止めたように綺麗に流れのまま凍りつく滝はとても荘厳な雰囲気でもあります。私は、この凍った滝登りは八ヶ岳と奥秩父そして丹沢で経験があります。神奈川県にある、山の中では比較的温暖な気候の丹沢でもギンギンに冷えた2月頃に滝が凍りつきます。場所はやはり丹沢の中でも寒い、西丹沢辺りですが、夏場に訪れても何のことはないような小さな沢が河床から壁まで、綺麗に凍りついた様子は本当に別世界です。滝の高さは、丹沢でも高い滝になると20メートル程の氷の壁になります。素手では当然登れませんので、アイスクライミング専用の道具を使います。冬山に使う道具として有名なピッケルとアイゼンを使うのですが、一般の雪山で使うものとはかなり違った形をしています。ピッケルは柄の部分が短く、先は鋭くとがっています。このピッケルを1本づつ両手に持ち、氷に交互に突き刺して登ります。登山靴に着けるアイゼンも、氷登り専用で、刃の部分が鋭く長くとがっています。つま先の前に飛び出したこのアイゼンの刃をやはり氷に蹴りこんで登ります。つまりちょうどカマキリのような格好で両手のピッケルと両足のアイゼンを交互に氷に刺して、高度を稼ぐ訳です。氷にも硬さがあって、柔らかい氷はザクッと気持ちよく刺さりますが、堅い氷だとうまく刺さらず、ピッケルを刺してもアイゼンを蹴りこんでもただただ割れるだけの時もあります。岩登りの場合は、岩の感触が直接両手に伝わってくるので自分が登っている実感が沸きますが、アイスクライミングの場合は、ピッケルという道具を経ての氷の感触なので、なにかしら別世界のような氷の壁の前にただ自分が浮かんでいるような、なにかしら変な気分になることがあります。しかし登り着いたときの充実感は、やはり岩登りに勝るとも劣らない気分です。ただ私は、どちらかというと氷を登ることそのものよりも、凍りついた滝が幾つも続く沢の中にいる事の方がワクワクします。岩登りもそうですが、登り出すと全神経はその登ることタダそれだけに集中してしまい、周りの景色は何も見えなくなります。またその無の世界も魅力的ではあるのですが、山の中にいる雰囲気と言うか、たとえば凍りついた世界の中に漂う自分とか、踏み込むと砕ける氷の音とか、太陽の光にキラキラと輝く氷とかをただただ眺める事が好きです。
 標高の高い山になると、アイスクライミングを楽しめるのは、例年だと初冬の時季だけになります。それは本格的な冬になると雪が降り積もって滝を埋めてしまうからですが、今年の冬はどの山も雪が非常に少ないので、まだこの時季でも楽しめるかもしれません。

 さて私、今夜からまた八ヶ岳に行きます。正月に天気が悪くて登れなかった所にまた行きます。八ヶ岳は遊びなのですが、その後引き続きお仕事で新潟の山に登りに行きます。横須賀に戻って来られるのは、おそらく10日ほど後でしょうか……。毎年そうなのですが、山に登っていて、久しぶりに横須賀に帰り着くと、本当に横須賀は暖かい所だなと思います。海から吹く風も心地よいです。

 ところで、昨年告知しました私のカレンダーですが、カレンダー希望をいただいた皆さんにはすべて送らせていただきました。ちょっと1月も半ばになってしまって申し訳なかったのですが、良かったら今年一年、お付き合いしてあげて下さい。
 さて毎月の月末には、山のご質問コーナーとしています。皆さんの山に関するご質問をお待ちしています。少しでしたら私に関するご質問でも結構です。皆さんのお便りをお待ちしています。

送り先は、 〒238−0008 横須賀市大滝町2−20
FAX 0468−21−3511
FMブルー湘南 川名匡の「山に遊ぶ」まで 皆さんよろしく。


寒い寒い冬と雪が大好きな一級遊び人、川名 匡でした。それでは行って来ます。



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