1999.5/18up
FMブルー湘南
川名 匡の山に遊ぶ
(1997.11/15放送分)
耐寒訓練
めっきり寒くなりました。私の穴あきGパンも少し寒々しくなってきた今日この頃です。皆さんいかがお過ごしでしょうか。土曜日の朝、まだ布団から出られずにいる人もいるのではないですか? 私もお休みの日は頭が痛くなる位の過剰睡眠が得意です。私の声を子守歌代わりにしていただいて結構ですので、ってちょっと無理かな(^^; よけいなことは言わないで、山のお話をしましょう。
さて、高い山はすでに真っ白です。当然、山の上は地上よりも寒いです。普通、標高が100メートル上がる毎に気温は0.6度下がります。ですから単純に、地上がプラス10度の時は、標高3000メートルに上がると、マイナス8度となります。風による体感温度の下降もあり、地上では考えられない位の寒さが待っています。その昔、私がまだ若かった頃……。初冬のこの時期になるとやっていた耐寒訓練が有ります。寒さに耐えるには、当然ですがたくさん着込めばいいわけです。だから下界での冬は、セーターやオーバーや色々な物を着込んで暖かくする訳ですが、山に登るとなるとなかなかそう上手くはいきません。つまり持っていく装備には限りがあります。つまりすべての装備を自分の肩に担がなくてはならない山登りで、そんなに沢山の防寒具を持っていく訳にはいかないのですね。しかも、たとえ沢山もっていけたとしても、厚手の服を何枚も重ね着したのでは体が思うように動かなくなってしまいます。さて、ではいったい何をすればいいのでしょうか? それが日頃心がける"耐寒訓練"です。言うとなんかかっこいいのですが、早い話が薄着に耐える事です。この時期になっても半袖のTシャツ一枚で暮らすとか、寝るときはタオルケット一枚で寝るとか、今から考えるとかなり強引なトレーニングでしたが、そう言う一念と言うか執念をもって実施すると、案外出来るものでした。最初のうちは、寒くてたまらなかったのが、一週間続けているとだんだんと体が慣れてきて、1ヶ月後にはそれが普通になります。ズバリ、そうして体をならしておいて山に入ると、着込む服の数が確実減ります。もっとも、それを実施していたのは、薄くて暖かい性能のいい山用の下着や中間着が高くて買えなかった若い頃の話で、今ではそんな根性と言うか無茶は出来なくて、少ない財力にものを言わせて、暖かさをお金で買ってしまっている訳ですが、はたしてそれがベストなのかな……とふと考えると、昔の方が自然だったのかなとも思います。少なくとも、そんな過激な事をやっていた頃は、不思議と風邪も引かなかったなと思います。さて、今はある程度お金を出して色々と暖かい登山用のウエアーをきていますが、それでもやっぱり私程度の財力には限りがありますので、今でもある程度薄着には心がけてはいます。ちなみに、オジンの代名詞であるところの"ももひき"ですが、年甲斐もなく見栄を張って、普段はそんな物は履かずに暮らしていて、いざ山に登るときに登山用のアンダーウエアーを着ると効果はてきめんです。特に行動中、つまり山をあくせく登っている時はマイナス何度の中でも暑い位です。さてせっかくですから、ここで山用の下着の話をしましょう。山用の下着も、普通下界で着る下着も、実は暖かさだけに関してはあまり大差は有りません。実はその違いは、汗をかいた時に出ます。普通の下着を着て汗をかくと、当然その汗は下着に残り、やがて冷たくなります。ひどい時は絞れるほどの汗を吸い込んだ下着は、急速にその下着を身につけた体温を奪っていきます。それは夏でも体をこわす原因になりますが、真冬のしかもマイナス何十度もの山の中では、それが致命的な作用をします。さて山用に作られた下着はどうでしょう。その特徴は撥水性の良さです。山用の下着は汗を素早く下着の外に出します。ですから肌に接した部分は常にドライです。この乾いた状態が、暖かさを保つ要素となる訳です。しかし、その下着に合わせた中間着や上着を着る事も大事です。シャツやセーターなどの中間着やヤッケ等の上着も撥水性がある製品にしなくてはいけません。でないと、下着からでた汗、つまり水分は外に放出されずに、結局中間に残ってしまうからです。
まぁ益々お金がかかる訳ですが、快適な登山をするためには仕方がありません。 さて話は少し変わって…
先日ある新聞に、山でラーメンを美味しそうに食べる番組をテレビで放送していたが、その残り汁がでたらどうするのだろう。大勢の登山者達がその残り汁を捨てていたら、自然はひとたまりもないと心配になった。という投書が出ていました。 おっしゃる通りですね。最近の登山ブームで登山者がワンサワンサと山に押し掛けている現状では、とても深刻な問題でしょう。
そんな環境問題が危惧される前、つまり昔の登山者の常識は、ゴミは作らないと言う事でした。ゴミが出なければ汚すことは無いわけで、残り汁などの生ゴミもしかりで、私などはラーメンの汁はすべて飲み干しますし、ゴミが出ないような調理と準備をして出かけます。まぁそれは、個々の登山者にとっては、環境問題と言うよりも、登山の軽量化と言う問題だった訳です。さて今、山における一番深刻な環境問題はトイレだと思います。人間、何日も我慢するって事は出来ない相談で、一つの山に何千人、何万人と押し掛ける今の状態では、そのうち人間の落とした固形物で山の標高が高くなってしまうかも…なんて言うことがけして冗談ではなくなっています。皆さんはどうしたらいいと思いますか?
さて、お時間も無くなってきましたので、このお話はまた別の機会にと言うことで、今日はこの辺で。
なんか、最後はちょっと臭うお話になってしまいましたが、また、山のお便りお届けします。
しばれる冬とシンシンと降る雪が大好きな一級遊び人:川名 匡でした。ども
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