2002.10/10up
FMブルー湘南
川名 匡の山に遊ぶ
(2001.12/01放送)

冬本番

時間の進み方が近頃特に早くなりまして、ついこのあいだお正月だったような気分でしたが、気がついたら師走になってしまいました。
一年一年を大事に過ごしたいとか、やりたいことはドンドンやらなきゃなんて思い出すって事は、つまり年をとってきたと言うことで、無駄な時間をドンドン垂れ流して何の後悔も不安も無いのが若者だと思います。  
さて私ももう若者ではないようで、山が好きだというからには、できるだけ沢山の山に登って、色々な景色を眺めてみたいなと思っています。もう山登りを始めて今年でまる25年、もうすぐ目の前の迫っている来年には26年目に突入しますが、今までは一点集中というか、行きなれたそして惚れ込んだ山に何度も足を運ぶ事が多かったと思います。山は四季折々は当然のこと、同じ季節に訪れても毎年毎年微妙に変化しています。天候もまたしかりです。また山側だけでなくこちら側の気分でも、その時その時で全然姿が違います。行けば行くだけ愛着も沸き、より落ち着く場所になりますが、それでもその度に違う顔で迎えてくれて、驚きや発見をくれるのが"我が愛しき山々"です。しかし近頃になって、少し浮気心が出てきたというか、まだ訪れたことがない山々にも出かけてみたくなってきました。一つの山でさえ、そうして違う姿を見せてくれるのですから、まだ出会ったことのない山は、私にとって神秘の宝庫です。最近は、あまり登ったことがない北海道や九州の山々、そして特に外国の山々にもウズウズとしています。  

今日はなぜかしんみりと考えてしまうお話から始まってしまいましたが、これも師走という、何か忘れている事が無いか?やり残している仕事が無いかと、ついついソワソワしてしまう季節のせいでしょうか。今年の一年間も、沢山の山に登りましたが、まずは五体満足で何の支障もなくその都度下山できたことに感謝して、一年を締めくくりたいなと思っています。そして来年も行きなれた山に登って、更に行ったことがない場所や登ったことがない山も沢山歩いてみたいと思っています。  

そんな話の流れでという訳でもないのですが、先週の山は始めて歩いたコースでした。上州、今で言う群馬県の北西部ですが、そこに妙義山という山があります。ここ横須賀にも、別名、湘南妙義と言われている鷹取山がありますが、鷹取山の規模とはだいぶ違う岩山がそこにあります。その妙義山には中間道という稜線の中腹を歩くハイキングコースがあって、そこは何度か歩いているのですが、今回初めて、その妙義山の主稜線部分、尾根上を歩いてきました。妙義主稜線縦走は、岩登りの経験がない人にはちょっと難しい、上級者コースで、切り立った断崖や人の肩幅程度しかない細い尾根がつづきます。危ない部分にはクサリやハシゴが付いていて、上り下りを助けてくれますが、それでも高度感はバツグンで、高所恐怖症の人では足がすくんで歩けなくなってしまう事でしょう。今回は、その稜線の端から端まで中之岳神社から妙義神社までの一番長いコースを歩いて来ました。緊張が取れない部分が多くて、なかなかシビアーな気分で歩きましたが、こういう危険な道は、その後の開放感がまたたまらなく良くて、ついつい癖になってしまいます。かく言う私も、実は高所恐怖症でして、高い場所に行くと足がすくんでしまいます。しかし、考えようによっては、高いところが全然怖くない人が行っても何でもないところで、怖いからこそその気分を味わうという、何となく病気なところがあります。とにかく、スリル満点で、天気は快晴、紅葉には少し遅かったですが、妙義神社のモミジは真っ赤に染まっていてきれいでした。始めていったコースですが、満足度100%の一日でした。  

と言うわけで、今年は始めていった山も幾つかありました。まずスイス。ここは本当にきれいな国でしたね。山好きには応えられない国です。モンテローザ、ブライトホルン、リッフェルフォルンと、ここで幾つかの山に登りました。そして秋には安達太良山。この東北の山も初めてでした。そして先週の妙義主稜線と、今年はこれだけ新しい山に登りました。けっこう満足の一年でした。  

さて、もう12月と言うことで、なんか大晦日の様な雰囲気になってきましたが、まだまだ今年は一ヶ月もありますので、どっしりと落ち着いてしまう訳にもいきません。私も来週には富士山に登って、クリスマス頃にもどこかへ雪見登山に出かけるつもりでおりますので、今年の山行回数は少なくともあと2回は増える計算です。富士山は例年通りの雪上トレーニングで登ります。今年の雪はまずまずの様ですので、予定通りのトレーニングが出来るでしょう。富士山も冬は厳しい山で、標高が高い分、国内でも有数の困難な山になります。いったいどんな富士山が待ちかまえているのか、不安でもあり怖くもあり、また楽しみでもあります。このワクワクドキドキが、ある程度厳しさを求めた登山の醍醐味でもあると思います。  

ところで、話は少し変わりますが、山岳雑誌で有名な「山と渓谷」という月刊誌をご存じでしょうか?山登りを趣味にしている人でしたらご存じでしょうが、実はその山と渓谷の12月号に、私の文章を載せていただきました。今年初めて冬山へ行く人を対象にしたお話しで、"遭難回避術・超基本"と題して、雪崩の話と、滑落の話、そして登山計画のお話しを書かせてもらっています。たぶん、まだ本屋さんに売り切れずに残っていると思いますので、良かったら読んでみて下さい。
それでは又来週、山のお話しをさせてもらいます。

雪が大好きな"山岳一級遊び人" 川名 匡でした。ではまた。

 

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