1997.3/13up

南八ケ岳ジョウゴ沢

横須賀登高会・1997.2月L会山行


ジョウゴ沢大滝25m
期  日:1997年2月22日〜23日
メンバー:L川名/菅野

2/22(土)天候:雪
横須賀→新宿→茅野→美濃戸口1130

 横須賀を早朝出発。茅野よりタクシーにて美濃戸口到着。

美濃戸口発1150〜美濃戸1230/1250〜(北沢)〜赤岳鉱泉着1500

 今回、他のメンバーの都合がつかずに、2名での実施となった。茅野に着くと、小雪が舞っていたが、食料を駅前で仕入れてタクシーで美濃戸口入り。天候は今一だが、明日の予報がいいため、安心して入山する。今回は小屋に一泊ということもあって荷物が軽い。いつもの半分以下の重量だ。いつも寄る美濃戸の赤岳山荘でいつもの牛丼を食べて、北沢に入る。北沢はとても歩きやすくて楽だ。2時間ちょうどで赤岳鉱泉着。赤岳鉱泉に泊まるのは実は20年ぶり位で、昔どんな小屋だったか覚えていないので比較はできないが、それにしても立派な小屋だ。もっとも、小屋に泊まること自体、年に一度あるかないかだ。菅野が翌朝、トイレに行く人の足音がうるさくてよく眠れなかったという。私は、消灯前に熟睡状態だったのでよくわからない。ちなみに宿泊代は二食付きで7200円だった。


2/23(日)天候:快晴
ルート:ジョウゴ沢本谷{L川名/菅野}
赤岳鉱泉発0730〜ジョウゴ沢出合0740〜F10750/0830〜F20850/0920〜ゴルジュ帯0950〜大滝1030/1130〜硫黄岳直下1230/1245〜硫黄岳1330/1350〜赤岩の頭1410〜赤岳鉱泉1500/1530〜美濃戸1620/1650〜美濃戸口着1720

登擧開始
 快晴で気持ちが急いたが、食事が一番組にならず出発が少し遅れた。7時半発。時間的に中途半端だったのか、F1に着いても他のパーティが居ないので、少し足慣らしをした。今回菅野は初めての氷瀑なので、F1で少しトレーニングをする。時間もなくなるので8時半に出発。すぐにF2が現れる。登擧準備。そして私がリードして登り終え、菅野を登らせる。この時間になって何パーティか現れた。菅野は下から大勢に見物されて緊張気味だ。しかしことなく終了。F2を登り終えるとしばらく河原が続き、日差しもあり、少しバテ気味でゴルジュ帯入り口到着。
ゴルジュ帯はさして難しい滝も無く、ホワイトブルーに光る河床が綺麗だ。しばらくゆっくりと、氷の景色を楽しみながら登る。ゴルジュ帯が終わって、沢が右手に曲がると最後の大滝25mが現れた。1パーティがトップロープで取り付いていた。左手は熊手のような氷瀑が何層も出ていて、しかも晴天のためかポタポタ水が落ちている。なかなか手強そうだ。我らは当然、簡単そうな右手を登ることにする。しかし、簡単に見えてもそれはあくまで左手を見てこちらの方が簡単そうだという程度の簡単さで、下部は垂直でこれも大変そうだ。
 まず私がリードするが、今回持ってきた普段使用しているピッケル(氷瀑用で無い)が思いの外うまく刺さらない。何度もはじき返されてしまう。しかも垂直のため、アイゼンもいかにも頼りなさげに刺さっている。案の定、少し登ったところで刺さりの悪い方のピッケルが抜け、しかもその衝撃で両足のアイゼンも氷から抜けてしまった。後はもう片方のパイルのみ。片手でブル下がってしまった。しばしもがき、アイゼンを刺し直し、もう悪い方のピッケルには頼らずに、効きのいい方のパイルのみに頼り、悪い場所を乗り越した。(ふぅ〜一息)
大滝25m上部
 登り終え、菅野の番になったが、なかなか登ってこない。声もなかなか届かず苦労した。やがて菅野から「ここ登れない〜!」の声が届く。3回ほどトライしたが後続パーティの声にならないプレッシャーもあり、断念したようだ。氷瀑右手の岩場の部分を数メートル登り、一番傾斜のきつい部分をパスしてやっと登り着いた。だいぶ落ち込んでいたが、初めてなんだからと励まして登り始める。
 この大滝が終わると後はさして困難な場所は無い。グングンと高度を稼ぎ……と言いたいところだが、二人ともかなりバテバテになり登った。硫黄岳直下のハイマツ帯でとうとう我慢できずに休憩をとる。天気はすごく良い。遠く南アルプスも見えて気分は上々…しかしバテた体はあまり言うことを聞いてくれない。
 しかし、後続パーティが登ってこないことが少し気になったが、最近は大滝を登ったら皆懸垂で降りてしまうのだろうと納得。しかし、本当はそうでなかったと言うことが下山後分かったが、このときはまだ分からず、ただ何となく胸騒ぎがする程度だった。20分ほど休憩し、行動食や水分を補給して軽やかにではなくて、少し重たくなった腰を上げて出発。あともう少しで山頂だ。すでに赤岩の頭も、横岳方向のオオダルミも下に見える。稜線を歩く登山者もだんだんと近くなってきた。

 かなり苦しみながら、最後の岩場を乗り越えて、硫黄岳の山頂到着13時半。山頂には、我ら以外は登山者二人しかおらず、静かに景色を楽しめた。

硫黄岳
 山頂では自転車を押して登ってきた登山者に会いびっくり。世の中には変わったことをする人がいるものだ。あまりゆっくりしていても帰りが遅くなってしまうので下山開始。赤岩の頭から一気に下り、鉱泉到着15時。登擧用具などを片づけて身支度を整え出発。我らが鉱泉に下山してきたときに、小屋の前で心配そうな顔で山を見ていた登山者が気になった。彼らは私たちのすぐ後ろを登っていたパーティだ。

 美濃戸でホットミルクを飲む。本当はタクシーを呼ぶために電話だけ借りるつもりだったが、先に小屋にいた単独行の登山者が、タクシー呼ぶなら一緒に乗らないかと声をかけてくれたので、彼がカレーライスを食べ終わるまで待つことになったからだ。17時半にタクシー予約をして、16時50分出発。小屋を出ると県警のヘリコプターがなにやら長細い物体を宙づりして飛んでいったので事故があったことを確信する。ジョウゴ沢かな?あのパーティかな?と少し気になった。
 最初、単独の登山者が先に歩き出したが、林道脇の登山道に入ったためこちらも抜け道を通り、何となくおいつ追われつして美濃戸口には先に着いた。予約した時間の10分前だったが、タクシーはすでに待っていた。程なく同乗者の人も着き、出発。美濃戸口から茅野まではタクシー代4770円+送迎代180円となった。

 茅野駅到着後5分で臨時のあずさが来ることが分かりあわててホームへ向かう。我らはあずさ回数券を持っていたので素早く対応できたが、一緒にタクシーに乗ってきた人は乗れなかったようだ。
 閉まりかけたキオスクのおばさんに待ったをかけて缶ビール2本を確保。車中の人となる。あずさも、臨時のためか余裕をもって座れた。特急が走り出す前に、もう乾杯をしていた。

 [事故について]
 クライミングメーリングリスト及び翌日の新聞紙上にて事故の内容が分かった。
 発生場所はジョウゴ沢ゴルジュ帯上部ナイアガラの滝。発生時刻は13時50分。私たちが硫黄岳へ登っている最中だ。事故原因は懸垂下降の失敗で発生当時意識不明の状態で県警ヘリが到着する前に息をひきとったそうだ。
お亡くなりになった方のご冥福をお祈りします。


 以上

川名 匡(29期) 


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