[雷の話] 落雷に対する安全法(09/07放送)


 夏の雷というのは、地上の暖かい空気が上昇気流となって上空に上り、上空の冷たい空気と触れたときに起こる"熱雷"といわれているものがほとんどですが、特に山だけでなく、地上でも当然遭遇する事があります。
 その雷の移動距離ですが、1〜10Kmの範囲にわたります、たとえば雷鳴が聞こえる距離が約10Km程度ですから、どこか遠くでゴロッっと聞こえたその次に自分の頭の上に落ちる可能性は充分ある訳で、たとえばゴルフやテニスなどの野外スポーツをしていて、音が遠いのでまだ大丈夫だと思いそのまま続けていて落雷事故に遭遇した、という事例も少なくないですね。自分が野外の、しかも広い場所などにいた場合は、直ぐに避難した方がいいでしょう。また、雷の活動最盛期の、落雷と落雷との時間的間隔は約1分で、それと、たとえば半径100m以内に、続けて落雷する確率は低いので、一度落ちた場所は比較的安全かな、と言うことになります。
 山で遭遇した場合は特に、雷雲も確実に移動していますので、その辺の同じ場所に落ちない確率も、より高くなります。また昔よく、雷が鳴り出したら、金属を身につけている場合は直ぐに捨てるとか言いましたが、これは間違った安全法です。それは、人間のからだその物が小さな金属よりも多くの落雷を引きつける作用があるからで、雷は金属を身につけているいないに関わらず体に落ちてきます。実は金属片を身につけている事で、体に雷が落ちた時にその身につけている金属片部分周辺に"部分沿面放電"が発生し、熱傷(火傷or電紋)が生じますが、それらは二度以下の浅い熱傷で容易に治癒することが出来ますし、それにより致命的な体を流れる電流(体内伝導電流)は減少するという研究報告があります。つまり金属片は捨てても意味がないばかりか、身につけている事により、身体への直撃雷による致命的な傷害を減少させる効果がある訳です。
 落雷で死亡事故になるのは直撃あるいは側撃で、落雷電流が"伝導電流"となって人体に流入する時に限られます。ちなみに、皮膚、衣服、レインコート(ゴム引き含む)、ゴム長靴等、すべて落雷電流を防止する絶縁効果は無く、直立する人体は落雷に対して、約300オームの導体として作用します。
 金属、非金属に関係なく一番危ないのは頭より飛び出た突起物などでしょう。雷の音がしているのに、クラブをスイングして振り上げた瞬間とか、ラケットを振り上げた瞬間とかが、まさしく危ない瞬間でしょう。先ほど話したように、雷は遠くに聞こえていても、実は真上にいる事があるからです。
 さて、雷に遭遇したときは、どんな場所に避難したらいいのかというのは、かなり難しい問いとなります。つまり野外で100%安全な場所は無い訳ですが、まあ、ここは危ない、特に危ない場所というのは、樹木の近くや避雷針の付いていない高い建物(クレーンや煙突)、それらの近くの"2m以内"は、たとえば周囲に何もない平坦地よりもさらに危険です。これは、それらの突起物に雷がより落ちやすい事がひとつ。そして、落ちた雷が近くにいる人間に"二次放電"(側撃)してしまうからです。これは、より致命的な傷害になります。これはテントのポールなどにも当てはまりますので、周囲に何もない平坦地に立てたテントの中に避難することも危険な自殺行為となります。また、その二次放電の場所の近くに居る人数が増加すると、死亡者、重傷者が増加し、落雷あたりの災害も増加します。一次被雷物体から2m以上隔離して居れば傷害は軽傷となります。さて、では地面に落雷した場合の二次傷害はどうでしょう。落雷による、地表の伝導電流が人体に及ぼす効果は殆ど認められません。落雷に伴って地表に沿面花火放電(稲妻)が走行する時、たまたまその線上にいると、地表に接近した身体の部位に、熱傷痺れ、運動障害等を生ずることがありますが、これらの傷害は一過性で、時間とともに回復します。

 この辺で話をまとめましょう。"雷に遭遇したらどうするか?"
 野外では、金属製品は身につけたままとし、傘や釣り竿その他の突起物をからだより高く突き出さない。テントのポールや、その他高さ4m以下の物からはただちに離れる。落雷直後の1分間を使って移動し、危なくない空間に避難する。高い物体(4〜5m以上)を探し、その保護範囲内に移り姿勢を低くする。
(保護範囲内→2m以上離れて、その物体の頂上を45度以上見上げる範囲)BR>  樹木の場合は、幹だけでなく、枝や葉っぱ等から2m以上の距離をとって出来るだけ姿勢を低くする。送電線や配電線がある場所では、その真下に移動して避難する。野外の場合は100%安全な場所は無いので、建物を探して中に入る。呼吸・心拍の止まった被雷者が出たら、真っ先にその救出にあたり、人工呼吸と心臓マッサージを実施し、呼吸・心拍の回復に努める。
 と、このようになります。
 とにかく、野外で雷に遭遇したら、おへそを隠すだけでなく、一刻も早く安全な場所に避難する事が大事ですね。皆さんも気を付けて下さい。

一級遊び人:川名  匡 でした。 ども

 参考文献:気象(36.8)「人体への落雷と安全対策」北川信一郎
※FMブルー湘南(78.5Hz)"川名 匡の山に遊ぶ"
 <毎週土曜日AM9:40〜9:50>9/7放送分より

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